研究実績の概要 |
LRRK2はパーキンソン病(PD)の主要な病因遺伝子の産物であり、細胞内で一部のRab(Rab8, Rab10など)をリン酸化するキナーゼである。LRRK2のRabリン酸化活性はPDにおいて上昇していることが示唆されており、本研究ではその活性調節機構に着目して解析を進めてきた。これまでに、LRRK2のRabリン酸化活性が細胞へのリソソームストレス負荷時に上昇すること、その上昇はLRRK2の酵素としての活性上昇とは異なることを確認し、本研究の2年次に論文として発表した(Kuwahara et al, Neurobiol Dis 2020)。最終年度はさらにLRRK2活性化を制御する上流因子の探索を行い、オートファジーに関わるLC3結合系因子群と、その一部の上流因子の関与を見出すとともに、既知のLRRK2活性制御因子Rab29の関与についてより詳細に明らかにした。 また、LRRK2活性化によって制御される新規リソソーム分泌現象のメカニズム解明と阻害剤探索のため、2年次までに簡便・高感度なリソソーム分泌アッセイ系を確立し、最終年度には既知薬理活性化合物を対象とした化合物スクリーニングを開始した。 PD病因因子αシヌクレインとの関係についても解析をすすめ、リソソームストレス負荷時においてはLRRK2が不溶性αシヌクレインの分泌を引き起こすとともに、αシヌクレイン凝集体の細胞内取り込みがLRRK2を活性化するという、増悪サイクルが生じることを見出した。特に最終年度には、このαシヌクレイン分泌に細胞種特異性があること、分泌の少なくとも一部はエクソソームを介することを明らかにした。 さらに最終年度において、上記の研究に関連する知見をまとめた総説を1報、研究手法についての論文を2報発表した。
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