研究実績の概要 |
申請者はアルツハイマー病(AD)モデルマウスと患者脳を用いて網羅的にリン酸化プロテオーム解析を行い、AD病態に関わる17個のリン酸化タンパク質を報告した。17個のAD病態タンパク質は独自の研究成果であり、全てが新規のAD病態のターゲットとなる得るリン酸化タンパク質であり、独自性と創造性のある研究計画である。これらのAD病態タンパク質のうち、ADの超早期(アミロイド凝集前)においてリン酸化が変化するタンパク質はMARCKS, MARCKSL1, SRRM2であった。これらのタンパク質と周辺分子を解析することで超早期AD病態の分子機構を解析すると共に、得られた知見に基づいて診断法と治療法の開発を進めてきた。 本研究計画は解析の進捗が遅れていたMARCKSL1を第一番目の解析対象分子として申請した。未解析であったMARCKSL1へ焦点を当てた研究を進めるとともに、既に解析の進んでいるAD病態タンパク質であるMARCKSとその周辺分子についても並行して研究を進めてきた。MARCKSと周辺分子については進展があり、当初予定していたエフォートより多くを費やした。本申請と並行して進めているMARCKSと周辺分子の研究基盤は共通しており、計画通りに進まなかった場合には他のAD病態タンパク質の研究へシフトする代案を申請時に一部示しており、本報告はその延長線上に該当する研究報告である。AD患者あるいはADモデル系を用いてMARCKSと周辺分子のAD分子病態の解析を進め、AD病態のトリガー分子に対する治療法の基盤研究が進んでいる。また、報告した論文(Tanaka, NatCom. 2020)におけるMARCKSが関わるAD病態分子機構についてその研究基盤の一部を担った。
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