研究課題
リピート関連非ATG翻訳(RAN翻訳)は、開始コドンATGに非依存的な翻訳であり、遺伝子非翻訳領域内の異常伸長したリピート配列が起因するノンコーディングリピート病の研究から発見された。転写された異常伸長リピートRNAからRAN翻訳により産生されるポリペプチドは神経変性を引き起こすことから、ノンコーディングリピート病の発症におけるRAN翻訳の関与が示唆されている。しかし、RAN翻訳のメカニズムは未解明である。したがって、本研究ではRAN翻訳メカニズムの解明を目的とした。ノンコーディングリピート病でRAN翻訳が確認されているC9orf72遺伝子関連筋萎縮性側索硬化症/前頭側頭型認知症(C9-ALS/FTD)のショウジョウバエモデルを用いて、RAN翻訳関連因子の同定のための遺伝学的スクリーニングを行った。C9-ALS/FTDモデルショウジョウバエはRAN翻訳産物により高い致死率(25℃飼育条件下で100%)を示す。この致死率を指標に、第一染色体以外の90%以上のゲノムを網羅する161染色体欠失系統を利用して、致死率が改善する染色体欠失系統をスクリーニングした。これらの染色体領域に存在する遺伝子は致死率改善に寄与する、つまりRAN翻訳関連因子であることが予測される。昨年度までにRAN翻訳関連因子を含む14染色体領域を絞り込み、さらに染色体領域を細分化した微小染色体欠失系統、欠失した微小染色体領域に含まれる遺伝子の突然変異体系統を用いて遺伝子同定を試みていた。今年度は残っていた候補突然変異体系統のスクリーニングを行ったが、致死率改善に寄与する遺伝子の同定には至らなかった。微小染色体欠失系統までは致死率の改善が見られる系統があり、一部の候補突然変異体系統が存在しないためにスクリーニングを行えなかったことから、その突然変異体の遺伝子が改善効果を示す可能性がある。
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