研究課題/領域番号 |
19K07827
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
田中 達英 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (80567032)
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研究分担者 |
辰巳 晃子 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (90208033)
和中 明生 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (90210989)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 疼痛 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
痛みは身体の異常を感知して警告信号を発信する重要な役割を果たす。しかし、痛みは様々な疾病においてQOLを著しく低下させる因子でもある。疼痛の発生メカニズム及び神経系における伝達機構は多様でありその全貌は明らかではない。我々は、別の研究テーマで使用しているBACトランスジェニックマウス(以下、TGマウス)が、痛み刺激に対する反応が著しく低下していることを偶然に発見した。 我々は、TGマウスではBACトランスジーンの挿入によって、内在性の遺伝子の発現が阻害または変動した結果、疼痛刺激に対する行動変化が起きたと仮説を立てた。次世代シークエンスを用いた順遺伝学的なスクリーニングにより、トランスジーン挿入部位近傍の3つ遺伝子制御が完全に破綻していることを見出した。本研究では、同定された候補因子の中で細胞膜の動態や細胞内トラフィッキングに関与する因子、Sorting nexin (Snx)に着目した。 Snx-KOマウスはTGマウス同様に痛み行動の減弱と免疫系細胞の異常が認められた。また、WTおよびSnx-KOマウスからDRGニューロンを調整し、Ca imagingを行なった結果、Snx-KOマウス由来のDRGニューロンでは発痛物質に対する反応が有意に減弱していることを見出した。さらに、疼痛発生時に機能が亢進する疼痛関連因子の発現を調べた結果、Snx-KOマウスではDRGにおけるこれらの発現が著しく低下していることを見出している。また、Snx-KOマウスは免疫系の細胞、特にマクロファージの機能に異常が認められることから、マクロファージ特異的なコンディショナルKOマウスを作製し疼痛に対する行動を評価した。このcKOマウスでも痛覚鈍麻の表現型を示したことから、マクロファージのSnxが疼痛に重要な因子であること、痛覚神経の疼痛因子の発現に影響を及ぼすことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々はこれまで、TGマウスおよびSnxヘテロKOマウスにおいて化学刺激(5% ホルマリンを後肢皮膚にinjection)後の末梢マクロファージでサイトカインやケモカイン発現量が減少していることを見出している。本研究ではまず、SnxヘテロKOマウスで炎症性因子の発現のみならず、マクロファージの遊走能、炎症メディエーター分泌能が野生型(WT)と差異が認められるかを解析したところ、遊走能が顕著に低下していることを見出すことができた。 SnxヘテロKOマウスはTGマウス同様、痛み行動が減弱する。我々は末梢の免疫系細胞におけるSnxにより疼痛が惹起されると仮説を立てているが、SnxヘテロKOマウスでは詳細な疼痛機序が見い出せない。Snxが疼痛に及ぼす責任部位は本当に免疫系細胞か、または痛みの伝導に関わるDRGか、あるいは両方かを明らかにするためには部位時期特異的なKOマウスの解析が必須となる。そこで、マクロファージ特異的(Lysozyme M-Creマウス, Cx3cr1-CreERT2マウス)、およびDRG特異的(Advillin-Creマウス)にSnxをKOしたconditional KOマウス(タモキシフェン誘導型)を作製した。興味深いことに神経特異的conditional KOマウスでは痛覚鈍麻は示さず、マクロファージ特異的conditional KOマウスでは機械刺激や化学刺激に対する疼痛行動が減弱した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで用いているTGマウス、Snx-KOマウスと新たに作製したconditional KOマウスを用いて、同定遺伝子の欠損がなぜ機械刺激と化学刺激誘発性疼痛行動を抑えるのかについて解析する。Snxは細胞内においてエンドゾームに局在し、膜局在する物質の輸送に関わる因子である。Snxのカーゴ(積み荷)は何かを明確にするため、これまで候補に挙がっている数種類のカーゴ因子について293T細胞を用いて免疫沈降法で明らかにする予定である。また、マクロファージのSnxがどのような機序で末梢神経神経の疼痛関連因子の発現に影響を及ぼすのかを明らかにしたい。
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