研究課題
痒みの伝達は、既存の痒み分子(GRP(gastrin-releasing peptide receptor;ガストリン放出ペプチド受容体)に痒み伝達の情報が集約され、脊髄より上位の脳の痒み伝達経路へと情報が伝達され、一連の痒みの伝達経路となると推測されている。しかしながら痒みは多様な病態によって引き起こされる不快な感覚の一つであることから、痒みの程度や、皮膚組織への損傷の程度によって、痒みの病態が異なることが知られている。従って、既存の痒み分子以外の新たな痒み伝達に寄与する分子が痒みの伝達に寄与し、複雑な痒み伝達機構に寄与することが推測されている。そのうえ、既存の痒み分子との関連性を解明することもまた、複雑な痒み伝達機構の解明につながることが期待できることから、いまだ解明されていない痒みの病態の解明へとつながることが期待できる。そこで、これまでの研究により、オーファン受容体GPR83が脊髄における痒みの伝達に寄与することを示唆する結果を得ているが、どの痒みの病態に寄与するかについては、不明なままである。そこで、どのような痒み刺激に応答するのか、詳細に行動学的な解析を進めることで、多様なかゆみ刺激に対するこの分子の関連性について明らかとした。さらに、痒みは痛みと類似する体性感覚であることから、「痛み」と「痒み」の伝達経路の違いがどのように区別されるのかについては、実験試薬の作製が当初の計画通りに進まなかったため、実験に一部遅れが生じている。そこで、この検討については、次年度に評価を行う。
3: やや遅れている
今年度計画していた解析のうち、形態学的な解析が計画通りに進行していない。というのは、実験の条件検討が十分に進んでいなことが主な要因である。そこで、次年度は当初予定している実験も含めて、形態学的な解析を併せて行う。
今後は、体性感覚の伝達に寄与する分子に着目し、これまで痒みの伝達への寄与が報告されていない分子が、痒みの伝達へ寄与するかについて検討する。というのは、体性感覚には体表を触れることに応答する分子が報告されていることから、痒み伝達にこれらの分子がどのように関与するか、検討を進める。さらに、痒みは多様な病態がきっかけとなって生じる不快な感覚であるため、その病態の解明には多くの課題がある。そこで、どのような外的な刺激によって、脊髄に発現するどの分子が応答するか検討する。さらに、末梢組織や神経線維が推測される痒み分子が、痒み病態の程度に応じてどのような役割を果たすか検討する。そのために、初代神経培養細胞を用いて、痒みへの寄与が示唆される分子の発現を評価することで、新たな痒みの分子を同定する。
今年度に購入を予定してた機器について、機器の仕様を再検討する必要が生じた。そこで、次年度に購入時期を変更する。
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Peptides
巻: 124 ページ: 170232 - 170239
https://doi.org/10.1016/j.peptides.2019.170232
Neuroscience
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https://doi.org/10.1016/j.neuroscience.2019.05.028