研究課題/領域番号 |
19K07829
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
石井 聖二 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50468493)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 一次繊毛 / 大脳皮質 / 樹状突起 / アルコール曝露 / 環境ストレス / 細胞外小胞 |
研究実績の概要 |
2021年に発表した米国科学アカデミー紀要誌の論文において、研究代表者は、臨界期中に環境ストレスを与えた一次繊毛欠損マウスの大脳皮質の第5層神経細胞を調べたところ、斑点状の活性型カスパーゼ3が、特に大脳皮質の第5層の神経細胞に多数検出されることを見出し、さらにIGF-1受容体が大脳皮質の神経細胞の一次繊毛膜上に集積し、PI3K/Aktシグナル伝達経路が活性化されていることを明らかにした。一方で、臨界期中に環境ストレスを与えた一次繊毛欠損マウスの大脳皮質の第2/3層神経細胞においても、斑点状の活性型カスパーゼ3が多数検出されることを見出している。研究代表者は、IGF-1受容体が大脳皮質の第5層の神経細胞の一次繊毛膜上に集積し、PI3K/Aktシグナル伝達経路が活性化されていることを明らかにしているが、IGF-1受容体が大脳皮質の第2層の神経細胞の一次繊毛膜上に集積していないことも確認している。従って、第5層において発現しているIGF-1受容体を第2層に運搬する何らかのシステムが想定される。近年、一次繊毛の先端が千切れて細胞の外に放出される現象が発見され、細胞の外に放出された毛の先端部分に含まれているタンパク質を高精度に検出する方法が確立されている(Phua S.C. et al, Cell, 2017)。そこで、研究代表者は、胎生14日目大脳皮質由来神経細胞を用いて培養上清を回収し、超遠心法により細胞外小胞(Extracellular Vesicles; EV)を抽出する実験系を構築することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに研究代表者は、超遠心法によりEVの抽出に成功してはいるものの、哺乳類の細胞は、一次繊毛から放出される小胞とEVを共に放出しているため、超遠心法により培養上清から得られたEVは、一次繊毛から放出された小胞であるのか、あるいは、細胞から放出されたEVであるのかを区別することが難しい。従って、一次繊毛から放出される小胞のみを解析する手法を考案する必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
一次繊毛から放出される小胞のみを解析する手法として、繊毛を持つ細胞と持たない細胞、それぞれの培養上清からEVを超遠心法で回収することが考えられる。今後は環境ストレスを与えた正常マウス及び一次繊毛欠損マウスの胎生14日目大脳皮質由来神経細胞の培養上清からEVを抽出する。そして、それぞれのEV中のIGF-1受容体の含有量を検討することで、一次繊毛から放出される小胞のみを明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題における最終実験を行うために、今年度までに使用予定だった物品費を、次年度分に繰り越す必要があったため。
|