研究実績の概要 |
高齢化が進む本邦では、加齢を発症要因の一つとするパーキンソン病(以下PD)患者は、増加している。しかし、根本的治療法は未だ解明されていない。そのため、発症機序の早期解明や新規治療標的遺伝子の探索が求められている。本研究では、PD関連遺伝子の機能欠失が示す共通の表現型の探索、関連遺伝子間の相関を解析することで鍵となる遺伝子を特定すること、さらに、共通の表現型に関わる遺伝子とカギとなる遺伝子の相関を明らかにすることで、新規治療標的遺伝子の特定を試みた。モデル生物ショウジョウバエを用い、8個のPD関連遺伝子の機能欠失系統を用い、PD原因遺伝子LRRK2が複数のPD関連遺伝子と相関し、神経伝達物質の放出に関わる有芯小胞の軸索輸送に関わるSmall GTPase, Arl8の軸索輸送を制御していることを明らかにしている。LRRK2やVps35, INPP5Fの機能欠失は、幼虫運動神経にシナプス終末でのArl8集積を引き起こした。電子顕微鏡による観察からArl8集積部位には有芯小胞が集積していた。そこで、Arl8や有芯小胞の軸索輸送に関わるRab3とLRRK2の相関を解析し、Rab3の過剰発現がLRRK2の欠失により生じるシナプス終末でのArl8の集積を改善することを明らかにした。さらに、有芯小胞の軸索輸送に関わる遺伝子Unc-104とLRRK2の関連を明らかにした。LRRK2機能欠失が示すArl8の集積は、Unc-104の過剰発現でも生じており、LRRK2の欠失とUnc-104の欠失を組み合わせることで改善された。本研究の成果から、Rab3やUnc-104により制御されている有芯小胞の順行性輸送を正常化することがPDの治療や進行を抑制する可能性が示唆された。
|