研究課題
研究の申請を行った時点から比べると、老化研究および脳の炎症解析における1細胞解析を適応した世界的な研究の進捗は目覚ましい発展があり、特にTony Wyss-Corayらによるハイインパクトな知見およびマイクロ流路系と1細胞RNA-seqを全身臓器に対して実施した細胞の全身百科事典ともういうべき成果が報告された(Tabura Muris Consortium)。これを含む知見をもとに、PARK2欠損マウスの解析を進めたが、野生型と比較しても、若年時の脳における血管やマイクログリア、アストロサイトのマーカーを用いた基本的な解析を行い、またそれらの炎症マーカーについても検証したが、遺伝型に伴う過多を検出することはできなかった。約300匹の繁殖コホートにおいて、産仔数の性別や寿命において遺伝型に伴う著しい偏りは観察されなかった。血管の分取方法については、独自の酵素処理法を検討して分離することが可能となっている。ただし予備的な結果として加齢による亜集団の変化について知見を得ていたが、現在までのところ再検討中である。また薬物投与モデルの作成においては、昨今注目される脳腸連関に関連してより末梢免疫系が関与してPD病態に相応しいと考えられるロテノン投与モデルの作製を進めた。過去の文献を参考として、PARK2はC57Bl6系統であることから再検討を行い、異なるロテノン投与量および経口投与あるいは腹腔内投与の経路を検討した。投与量の上限値は把握され、6週間程度に渡る中期的な投与も検討した。投与コホートのサンプリングは終了し、脳切片および末梢臓器について炎症マーカーを検討している。包括的トランスクリプトームデータについてWyss-CorayらのグループによりAgingコホートの血管における知見が報告された(2020, Cell Reports)ので、今後このデータも参考として進める予定である。
3: やや遅れている
ロテノンの投与濃度を検討した。文献を参考に、経口投与と腹腔内投与とを検討したが、許容濃度に差があることが示唆された。またCMCなどの基材を混合した経口投与方法を検討し、短期および中期的な投与を検討する必要が生じた。PARK2ノックアウトマウスのコホート形成を進めており、順調に繁殖が進んでおり、コホートの形成も行えた。コホート自体の加齢にかかる時間が必要である点は予め想定されたことではあるため、著しい遅延の理由とは考えていない。
マウス飼育環境の手狭さはあるが、コホート形成は順調に進行している。コホートへのロテノン投与やトランスクリプトーム解析のための準備は初年度に済ませたことから、今後は計画どおり解析を進める予定である。
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