研究課題
アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)においては、アミロイドβタンパク質(Aβ)の可溶性集合体であるアミロイドβオリゴマー(AβO)が強い神経・シナプス毒性を持ち、発症因子として重要な役割を持っている。AβOは神経細胞膜上の何らかの受容体に結合することで、シナプス毒性を発現すると想定されているが、そのメカニズムは不明確である。本研究では、AβOと結合性のある受容体について、予備的データを基に検討した。ラット初代培養神経細胞に、Aβ42からなるAβOを2.5μMの濃度で添加し、2-3日後に、2重免疫染色、ウエスタンブロットを行った。細胞を非浸透条件下で、候補受容体の細胞外部分に対する特異抗体と、Aβ特異抗体で、二重染色した結果、AβはNMDA受容体のGluN1サブユニット、及び代謝型グルタミン酸受容体1(mGluR1)と共局在していたが、mGluR5とは共局在が少なかった。さらに、AβはNMDA受容体のGluN2Aサブユニットとは共局在が少ないが、GluN2Bサブユニットとはよく共局在していたことから、AβはNMDA受容体の中では、シナプス外に多いGluN2Bを含むものに結合することが示唆された。これらの受容体のタンパク質発現のレベルをウエスタンブロットで調べたところ、無処理の対照とAβO処理細胞ではほぼ同等であった。一方、ADモデルマウスの脳組織中に存在するAβOを定量的に解析するため、市販のELISAキットなどを用いて、予備的検討を実施中である。また、本研究と密接な関連を有する論文のリバイズを行い、投稿後受理された。
2: おおむね順調に進展している
AβOと結合性を持つ受容体を2種類見出すことができた。特にNMDA受容体に関しては、特定の種類のNMDA受容体とAβOの結合性が高いことが示唆されたことは、AβOによるシナプス変性の機序解明のため、重要な知見と考えられる。
進捗状況に記した研究を予定通り進めることにより、AβOが結合する神経細胞膜上の受容体の実体を明らかにしてゆくとともに、ADモデルマウスを用いて、脳内のAβOとシナプス病態の関連性について検討を行う予定である。
残額が非常に少額で、適切な物品購入が難しいため、次年度に繰り越すこととした。
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J Alzheimer’s Dis
巻: 70 ページ: 937-952
10.3233/JAD-190098