研究課題/領域番号 |
19K07839
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
新庄 記子 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (60794039)
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研究分担者 |
野呂瀬 一美 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任准教授 (30156244)
彦坂 健児 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (30456933)
吉田 裕樹 佐賀大学, 医学部, 教授 (40260715)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | トキソプラズマ / 薬用植物 / ヒペリシン / ハイパーフォリン / Hypericum |
研究実績の概要 |
トキソプラズマは世界人口約3割に蔓延する日和見感染寄生原虫であり、慢性感染において脳に潜在する原虫の再活性化が、精神神経疾患の発症に寄与する可能性が示唆されている。本研究では安全性の高い伝統医薬に注目し、有効かつ安全な抗トキソプラズマ薬としての可能性を検討する。 1. <オトギリソウの抗トキソプラズマ効果の検討> 薬用植物オトギリソウメタノール抽出物およびその分配画分(酢酸エチル画分、ブタノール画分、水画分)の抗トキソプラズマ効果をin vitroにて検討した。その結果、メタノール抽出物と酢酸エチル画分にトキソプラズマ増殖阻害効果、マクロファージ感染防止効果、炎症抑制効果が認められた。さらに、酢酸エチル画分の主要成分であるアントラキノン誘導体ヒペリシンの抗トキソプラズマ効果を検討したところ、弱いながらトキソプラズマ増殖阻害効果が認められ、ヒペリシンがオトギリソウの抗トキソプラズマ効果に寄与することが示唆された。 2. <オトギリソウ属植物含有成分および抗トキソプラズマ効果の比較検討> 3種のオトギリソウ属薬用植物について、指標成分であるヒペリシンとハイパーフォリンの含有量を比較したところ、ヒペリシンについてはH. erectum > H. perforatum >> H. ascyron、ハイパーフォリンについてはH. perforatum >> H. erectum = H. ascyronの順であった。一方、抗トキソプラズマ効果は、H. perforatum > H. erectum >> H. ascyronの順であった。またH. perforatum特異的成分ハイパーフォリンの抗トキソプラズマ効果を検討したところ、非常に強い効果が認められ、H. perforatumの強い抗トキソプラズマ効果はハイパーフォリンによることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Hypericum薬用植物であるH. erectumによる抗トキソプラズマ効果、およびその主要成分であるヒペリシンが当該薬効に寄与する可能性を見出した。また、この成果をJournal of Natural Medicineに発表した。 続いて3種のHypericum薬用植物(H. erectum, H. perforatum, H. ascyron)に関し、その成分比較と薬効との相関関係を検討し、H. perforatumが最も強い抗トキソプラズマ活性を示すこと、またその特異的成分であるハイパーフォリンが非常に強い抗トキソプラズマ活性を持つことを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
最も強い抗トキソプラズマ効果の認められたHypericum perforatumに注目し、トキソプラズマ感染に対する神経細胞保護効果、脳炎症抑制効果を検討する。実験系として、マウス脳由来グリア細胞(アストログリア、ミクログリア)初代培養系、およびグリアと神経細胞共培養系を用い、in vitroにおいてH. perforatum抽出液、分配画分、薬効成分の効果を検討する。指標としては、トキソプラズマ増殖をGFP標識トキソプラズマ原虫の蛍光観察とDNA定量(qPCR)にて、グリア細胞炎症応答を炎症関連遺伝子発現(qPCR)および炎症マーカータンパク質を標的とした蛍光免疫染色にて、さらに神経細胞への損傷を蛍光免疫染色にて比較定量する。
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