研究課題/領域番号 |
19K07840
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
田邊 勉 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (70183069)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 電位依存性Caチャネル / ミクログリア / 神経変性疾患 / パーキンソン病 / 神経炎症 / 老化 / Cav1.2チャネル / Cav2.2チャネル |
研究実績の概要 |
細菌感染や、脳内に異物が蓄積したりすると、生体防御反応として自然免疫系が活性化し、まずM1系ミクログリアが活性化しこれら異物を貪食・消化・排除し、引き続きM2系のミクログリアが活性化し、様々なサイトカイン、ホルモン等を放出し、ダメージを受けた神経細胞等を修復する。しかし加齢に伴い、M1系及びM2系に特有の遺伝子の発現が両方ともに高まり、外からの刺激に過剰に反応するようになること(ミクログリアのプライミング化)、さらにはM1系からM2系へのミクログリアの変換がうまくいかなくなること(炎症反応の慢性化)が起こることが知られており、これが老化脳における炎症反応遷延化の基盤となっている。本研究の目的は老化脳における炎症反応遷延化のメカニズムを明らかにし、それを基盤とした抑制法を見出すことである。今年度、ミクログリアに発現するCav2.2及びCav1.2の2種のCaチャネルが制御因子であることが明らかにすることができた。 【成果のポイント】 1.老齢マウスの脳において、自然免疫系で主要な働きをするミクログリアのM2型への移行が阻害されていることが明らかになりました。2.ミクログリアのCav2.2を阻害するとM2型への移行が促進されました。3.老齢マウスでミクログリア特異的にCav2.2の発現を抑制すると、老化に伴う神経炎症の遷延化が抑制されました。4.本研究の知見は、老化に伴う神経炎症の遷延化を緩和する新たな方法の開発に貢献することが期待されます。5.L型カルシウムチャネルの拮抗薬は、ミクログリアのM1型活性化への移行を促進し、M2型活性化への移行を抑制することを明らかにしました。6.マウスでミクログリア特異的にCav1.2の発現を抑制すると、パーキンソン病様の症状が悪化することが実証され、L型カルシウムチャネル拮抗薬を用いたパーキンソン病治療を行う上で重要な情報と考えられます。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度、ミクログリアに発現するCav2.2及びCav1.2の2種のCaチャネルが制御因子であることが明らかにすることができた。具体的には老化脳においてミクログリアに発現するCav2.2チャネルが老化に伴う炎症反応遷延化の制御因子として機能していることを明らかにし、論文発表までもっていくことができた。またパーキンソン病モデルにおいてミクログリアに発現するCav1.2チャネルの活性抑制がパーキンソン病の重篤化に働くことを明らかにし、これも論文発表まで持っていくことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的はミクログリアに発現するCav2.2及びCav1.2の2種のCaチャネルが老化脳における炎症反応遷延化の制御因子であることを実証し、老化に伴う炎症反応遷延化の抑制や、これを基盤とする種々の疾患の治療をこれらチャネルの活性制御等により達成することを目指すことである。昨年度、ミクログリアに発現するCav2.2及びCav1.2の2種のCaチャネルが老化脳における炎症反応遷延化の制御因子であることを実証できた。さらにミクログリアのCav1.2チャネルの活性抑制がパーキンソン病の重篤化に働くことを明らかにし、これも論文発表まで持っていくことができたので本年度は、ミクログリアのCav2.2チャネルの活性抑制がパーキンソン病にどのような影響をもたらすのか、さらにはアルツハイマー病モデルにおいてミクログリアに発現するCav2.2及びCav1.2の2種のCaチャネルがどのような働きを有するのかを明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、成果の発表費用として計上していた予算を今年度に引き継いだ。国際学会で発表する計画であったが、投稿していた論文Acceptに時間がかかり、学会抄録投稿に間に合わず、発表を断念したことと、予定していた国内学会での発表(日本薬理学会で2件発表する予定であった)がコロナ問題のため会議が日本薬理学会誌上開催に変更された)。もしコロナ問題が落ち着けば今年度発表する予定である。
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