研究課題/領域番号 |
19K07844
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
石橋 大輔 福岡大学, 薬学部, 教授 (10432973)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プリオン / インターフェロン |
研究実績の概要 |
プリオン病は、ヒトのクロイツフェルトヤコブ病やウシの牛海綿状脳症 (狂牛病:BSE)などの各種動物に見られる空砲変性及びグリオーシスなどの脳内病理変化を伴う難治性の中枢神経変性疾患である。病原体(プリオン)は、核酸を有しないタンパク質のみで構成されており、宿主の正常プリオンタンパクが何らかの原因で異常化することによって形成されるため、アミノ酸配列は一致し、立体構造が異なるのみとされている。このため、感染症の原因となるウイルス・細菌等の病原体とは異なり、感染時に宿主の防御機構である免疫応答が惹起されないとされている。本研究では、I型インターフェロン活性化システムに注目し、病原体プリオンの感染病態を解明することを目的としている。本年度では、プリオンに感染した細胞へのIFNの影響について検討した。現在継続中の実験が多くあり、以下の状況である。リコンビナントI型インターフェロン(rI-IFN)は異常プリオンタンパクの発現に影響を与えていた。さらに、正常の細胞にプリオンを感染させるEx vivoプリオン感染モデル実験では、rIFNの前処理の実験を行い、プリオン感染に対し耐性を有しているか検討している。また、併行して創薬開発候補としてのI型IFN受容体の低分子化合物のアゴニストであるRO8191のrI-IFNと同様なプリオン感染に対する影響について検討している。現在は、上記に加え、種類の異なるモデル細胞における検討、低分子化合物誘導体の構造展開・作成、動物実験および細胞を用いた細胞内情報伝達機構について解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、プリオン病病態のモデル細胞やそのモデル動物を用いた実験が必要である。モデル動物を用いる検討では、プリオンを感染後、病態を発症し、死亡するまで1年程度かかる。そのため、実験結果の評価までには多くの時間を要するが、コロナ禍に加え、世界情勢の変化により、消耗品・機器供給の大幅な遅れにより、それに伴い実験計画も遅れていた。現在はモデル細胞を用いた実験などのI型IFN受容体を刺激する実験系における生化学的検討や分子生物学的検討の実験は順調に遂行している。総合的には、概ね順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、コロナ禍を含む世界情勢の変化に伴い、遅延した実験に引き続き、IFNの細胞内シグナル伝達の関与やIFNの下流の遺伝子におけるプリオン感染に対する影響を評価するため、異常プリオンタンパクを発現した培養細胞を用いた検討を主体にし、様々なインターフェン関連遺伝子発現させた際の影響について生化学的、分子生物学的手法を用いた解析を行う。また、低分子化合物の開発や、その評価としてプリオン感染モデル動物やEx vivoプリオン感染モデル細胞の実験系における解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度では、コロナ禍で既に生じていた、物品の供給遅れに加え、ウクライナ状勢の変化におけるヨーロッパを中心とした世界情勢の変化により、半導体などの供給不足が生じていた。本計画の実験も、その影響が出てしまい、プリオン感染細胞を用いた実験に用いる機器に関する物品の供給や、一部試薬を含む消耗品の供給が遅れてしまったため、次年度使用に至ってしまった。本年度は早期に、物品の納入予定であるため、プリオン感染モデル動物やEx vivoプリオン感染モデル細胞の実験系を用いて、I型IFN受容体を介したプリオン感染に対する影響について解析し、計画通り遂行していく。
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