研究課題/領域番号 |
19K07845
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
多田 美紀子 横浜市立大学, 医学部, 助教 (30722467)
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研究分担者 |
土井 宏 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (10326035)
竹内 英之 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (30362213)
田中 章景 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (30378012)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | DDX5 / TDP-43 / ALS / DDX17 |
研究実績の概要 |
DDX5をはじめとするDEAD box RNA helicaseが、ALSの病態にどのように関わっているかについて、病理学的側面、分子細胞生物学的側面、遺伝学的側面から検討を行い、ALSにおける新たな病態進展パスウェイを明らかにすることを目指す研究である。 まず、孤発性ALSにおけるDDX5の病態関与を証明するため、抗DDX5抗体を用い免疫組織化学的検討を行なった。対象は孤発性ALS33例、コントロール9例の剖検例の脊髄標本とした。コントロール症例では、抗DDX5抗体は核に濃染し、細胞質はびまん性に淡い染色性がみられた。一方孤発性ALS症例では核の染色性は濃いもの、淡いもの様々で細胞質の染色性はびまん性に淡くみられた。特徴的であったのは孤発性ALS症例33例中7例(21%)で、細胞質にDDX5陽性の細胞質封入体が認められたことである。このDDX5陽性細胞質内封入体は類円型で、形態学的にTDP-43陽性の細胞質内封入体であるround inclusionと類似しており、蛍光免疫二重染色でDDX5とTDP-43の共局在が認められた。 また、ALSモデル細胞でDDX5の細胞内局在を明らかにするため、neuro2A細胞を用い、DDX5と、野生型もしくは変異TDP-43を一緒にトランスフェクトして評価をした。その結果、過剰発現したDDX5と変異TDP-43はneuro2A細胞の細胞質に共局在がみられた。以上の結果はDDX5は孤発性ALSの病態に関与している可能性を示唆している。 さらにDDX-17については孤発性ALSにおける細胞質への微細顆粒状の蓄積を超解像顕微鏡を用いて評価し、小胞体マーカーであるGRP78との共局在を確認しており、DDX17が孤発性ALSで小胞体に蓄積することで病態に関わっている可能性を推測している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
孤発性ALSにおけるDDX5の病理学的検討に関して、孤発性ALS30例以上の症例を評価することができた。 また、孤発性ALSの主要な病理学的マーカーであるTDP-43との共局在を証明することができた。 さらに、neuro2a細胞を用いたALSのモデル細胞でのDDX5の細胞内分布についても評価・検討をすすめることができている。
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今後の研究の推進方策 |
DDX5の病理学的評価に関しては、脊髄前角細胞以外の部位についても評価を続けていく。DDX17に関しては、引き続き超解像顕微鏡を用いて、小胞体への蓄積についてさらに微細な局在を明らかにしていく。 さらにneuro2A細胞においてはTDP-43の野生型・変異型の過剰発現、DDX5/DDX17の過剰発現、ノックダウンを行い、それぞれRNAシーケンスによってmiRNAを含むRNA発現プロファイリングを検証する。これらデータを孤発症例でみられるmiRNA発現パターンの変化と比較検討することで、DDX5/DDX17の機能障害と孤発性ALSの間に共通の病態が存在するかどうかについて明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は培養細胞系を用いた実験も多く行う予定であり、抗体をはじめとする試薬、消耗品の購入に使用する計画である。
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