研究課題/領域番号 |
19K07846
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
鄒 鶤 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (40450837)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / アンギオテンシン変換酵素 / 知能指数 / ACE阻害薬 / アミロイド |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病(AD)では、アミロイドβ蛋白(Aβ)蓄積機構の解明が重要な課題となっている。我々は、血圧調節に重要なアンギオテンシン変換酵素(ACE)が、強毒性のAβ42を神経保護作用をもつAβ40に変換する活性を有すること、また、ACEに加えてACE2がより強毒性のAβ43をAβ40に変換することをin vitroの実験で明らかにした。本研究では、RA系の鍵分子であるACEとAD分子病態との関連をADモデルマウスを使用し、ACEのAD分子病態(特Aβ蓄積)に果たす役割を解析した。また、正常者、ACE阻害剤の服薬患者およびACE阻害剤以外の降圧剤服薬患者の8年間の知能指数の変化を推定した。 ACE阻害剤のカプトプリルを低濃度(low captopril)と高濃度(high captopril)を二種類の投与をAPPtgマウスへ11カ月間連続投与し、17カ月齢マウス脳内のアミロイド沈着をthioflavin S 染色で検討した。加齢対照群マウスの海馬および大脳皮質にアミロイド沈着が検出されたが、過剰用量のカプトプリルがAPPtgマウスの海馬および大脳皮質のアミロイド沈着を顕著に増強した。さらに、臨床に応用されている用量においても、アミロイド沈着の増強が認められた。これらの結果から、ACE抑制が脳内アミロイド沈着を促進することが示唆された。疫学調査ではACE阻害剤の服薬群は、ACE阻害剤以外の降圧剤服薬群と比べ、知能指数は有意に低下した。しかし、この低下は男性に限っており、女性に見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、臨床用量のACE阻害薬が脳内Aβ蓄積を増悪することをADモデルマウスを用いて明らかにした。さらに、疫学調査でACE阻害薬が男性の知能指数を低下させることを明らかにした。これらの結果から、ACEのもつAβ変化活性の維持は、ADの予防に重要な役割を果たしていることを示唆した。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、Aβ変換活性とangiotensin変換活性がACEの異なるドメインにそれぞれ存在することも発見した。Aβ変換活性をもつACEのN端ドメインのみをADモデルマウスに投与し、血圧上昇作用のangiotensin IIレベルに影響せず、Aβ42/Aβ40比の低下やAβ42沈着阻害を確認する。我々は、すでに、Histidineタグ付けのACEN端側ドメインのみ、あるいはC端側ドメインのみをもつ分泌型ACE cDNA発現ベクターを準備した。また、コントロールとして、Aβ変換活性部位にアミノ酸変異をもつACEのN端ドメイン遺伝子およびアンギテンシン変換活性部位にアミノ酸変異をもつACEのC端ドメイン遺伝子発現ベクターを作製する。
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次年度使用額が生じた理由 |
我々は、新たにプレセニリン(PS)がACEの糖鎖修飾を制御することを見出したため、PS欠損細胞にACEを発現させ、PSがACEのもつAβ変換活性を調節するか否かを明らかにする予定である。次年度使用額はこれらの実験に与える予定である。
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