研究課題
アルツハイマー病(AD)では、アミロイドβ蛋白(Aβ)蓄積機構の解明が重要な課題となっている。我々は、血圧調節に重要なアンギオテンシン変換酵素(ACE)が、強毒性のAβ42を神経保護作用をもつAβ40に変換する活性を有することをin vitroの実験で明らかにした。本研究では、RA系の鍵分子であるACEとAD分子病態との関連をADモデルマウスを使用し、ACEのAD分子病態(特Aβ蓄積)に果たす役割を解析した。また、正常者、ACE阻害剤の服薬患者およびACE阻害剤以外の降圧剤服薬患者の8年間の知能指数の変化を推定した。結果:過剰用量のACE阻害薬カプトプリルがAPPtgマウスの海馬および大脳皮質のアミロイド沈着を顕著に増強した。臨床に応用されている用量においても、アミロイド沈着の増強が認められた。また、ACE欠損のAPPtgマウス脳内のAβ42沈着が顕著に増加したことを明らかにした。これらの結果から、ACE抑制が脳内アミロイド沈着を促進することが示唆された。疫学調査ではACE阻害剤の服薬群は、ACE阻害剤以外の降圧剤服薬群と比べ、知能指数は有意に低下した。しかし、この低下は男性に限っており、女性に見られなかった。さらに、我々は、アンギオテンシンII受容体タイプIがAβ産生を促進することを明らかし、その作用機序には、β2アドレナリン受容体が関与していることを明らかにした。Aβ産生およびAβ除去機序の研究についても、新しい知見が得られた。我々は、新たに温度の上昇がγセクレターゼ複合体の構成を促進し、Aβ産生を増加させることを見出した。また、Aβ除去に重要なApoEの分泌がγセクレターゼであるプレセニリンに依存することを明らかにした。
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