研究課題/領域番号 |
19K07847
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
梅田 知宙 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (70549790)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 認知症進行の抑制 / リファンピシン / ドラッグリポジショニング |
研究実績の概要 |
研究代表者は、「すでに発症している認知症の進行」を抑制可能な薬剤の開発を目指し、本研究課題において、これまでに代表者自身が報告してきた既存医薬品リファンピシンのドラッグリポジショニングによる認知症予防薬効が、疾患進行のメカニズムである「神経毒性因子タウの細胞間伝播による脳内領域拡大」をも抑制可能であることを示したい。そこで、1年目の本年度には、1.tau病理伝播マウスモデルの作製、2.作製したモデルマウスへのリファンピシン経鼻投与、3.リファンピシン投与による認知機能障害への抑制効果についての検証、を行った。
1.病理伝播モデルの作製を行った。著者自らが作製した野生型ヒトtau発現モデルtau264マウスに対して、AD患者脳抽出物を片側海馬実質へと注入処置し、注入後6ヶ月間の飼育を行った。コントロール群には野生型マウスおよびtau264マウスを用いて、sham operationとして人口脳脊髄液 (artificial cerebrospinal fluid: aCSF)を片側海馬実質へと注入処置を行い、病理伝播モデルと同様に6ヶ月間飼育した。 2.注入処置から1 - 2週間後より6ヶ月間、リファンピシンの経鼻投与を行った。投与用量は0.1 mg/10 μL/day。コントロール投与としては溶媒CMC 10 μLを同じく経鼻にて投与した。 3.注入処置から6ヶ月後に、モリス水迷路試験にて認知機能の評価を行った。その結果、病理伝播モデルにおいて顕著な認知機能障害が観察された。一方、リファンピシン投与群ではこのような認知機能障害は見られなかった。以上の結果は、注入されたAD脳抽出物により誘導されたtau病理伝播が認知機能障害を引き起こし、リファンピシンの投与がこのtau病理伝播を抑制することで認知機能の低下を抑制したものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、初年度には病理伝播モデルの作製に必要なtau264マウスの繁殖操作を行い、その間に培養細胞系を用いたtau病理伝播へのリファンピシン薬効の確認を行う予定であったが、予定以上の頭数のtau264マウスを早期に得ることができたため、急遽予定を前倒しし、本来は次年度以降に予定していたin vivo試験を遂行した。その結果、認知機能障害を示すtau病理伝播マウスモデルの確立と、in vivoにおけるリファンピシン投与の認知機能保護機能を、初年度ですでに確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
今回観察されたリファンピシンによる認知機能保護能が、AD脳抽出物によって誘導されたtau病理伝播を抑制したことによるものであることを、今後の病理解析によって明らかにしたい。
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