研究課題/領域番号 |
19K07849
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
柴田 護 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 客員教授 (60286466)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 片頭痛 / 三叉神経 / CGRP / 感作 / 光過敏 / 活動性低下 / 生活の質 / 核酸医薬 |
研究実績の概要 |
マウス大脳皮質に皮質拡延性抑制 (CSD)を誘発することで片頭痛モデルを作成した。本マウスが三叉神経領域に感作を呈していることを、我々が独自に開発した熱疼痛閾値測定法 (Kayama et al. Cephalalgia 2018;38:833-845.)によって明らかにした。感作誘導の時間経過としてはCSD誘発3時間後から明らかになり、24時間後に最大に達し、48時間以降は正常に復した。CSDによる感作発現に対してカルシトニン遺伝子関連ぺプチド (CGRP)受容体拮抗薬であるolcegepantの効果を検討した。用量依存性を検討するため0.25 mg/kgおよび1 mg/kgを腹腔内投与したところ、用量依存的に感作誘導は抑制された。さらに、我々はCSD誘発24時間後に光過敏が生じていることをLight/Dark boxを用いて実証し、olcegepantによって用量依存性に抑制されることを確認した。また、赤外線トラッキングシステムを用いて明暗所でのマウスの活動性を連続的かつ定量的に記録し、CSD後に低下が認められることを見出した。さらに、この活動性低下もolcegepantによって用量依存的に抑制された。以上のことから、片頭痛によって引き起こされる三叉神経系感作、光過敏、活動性低下の発現にCGRPが関与することが本年度の研究によって明らかになったといえる。以上の成果を論文発表した (Tang et al. Sci Rep. 2020;10:11408.)。現在、CSD後に生じるCGRPの三叉神経節ニューロンにおけるmRNAおよびタンパク質レベルでの発現と、上記の光過敏と運動量の変化との相関性について検討している。CGRP mRNAの発現が認められた場合には、アンチセンス・オリゴヌクレオチドを用いた発現抑制を行って、CSD後のマウスの表現型への影響を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来の計画であれば、既に三叉神経節ニューロンにおけるCGRPの発現状況をmRNAとタンパク質レベルで確認し、アンチセンス・オリゴヌクレオチドによる発現抑制の検討に入っているべきである。研究の遅延は、新型コロナウイルス蔓延による研究活動の抑制の影響が大きい。しかし、我々はこの期間に過去のデータをまとめて片頭痛病態と関連のある論文作成を行い、公表している (Shibata M, et al. Neuroscience Bulletin 2021;37:103-116; Shibata M, et al. Molecular Pain 2020 Jan-Dec;16:174480692096085; Shibata M, et al. Cephalalgia 2020;40:1671-1675; Shibata M, et al. Neurosci Res 2021 Apr 2;S0168-0102(21)00073-0. doi: 10.1016/j.neures.2021.03.010.など)。
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今後の研究の推進方策 |
CSD誘導後のマウス三叉神経節凍結切片を用いて以下の実験を行う。①CGRP mRNAレベルでの発現をin situ hybridizationで検討、②CGRPのタンパク質レベルでの発現を免疫染色で検討、③CGRP受容体受容体刺激後の細胞内シグナル・トランスダクションの有無をProtein kinase Aリン酸化とCREBリン酸化の免疫染色を行って検討。 上記の結果をマウスの三叉神経領域の感作、光過敏、行動量と比較し、相関関係について調べる。 CGRPに対するアンチセンス・オリゴヌクレオチドを作成して、CSDで誘導されるマウスの表現型に対する腹腔内投与の影響を検討する。 データの最終解析を行って、論文を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のように研究が遅延しているため、昨年度分に繰り越しが生じた。未使用金はin situ hybridization、免疫染色などを行う際に必要な試薬に使用する予定である。
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