研究実績の概要 |
本年度は、マウス大脳皮質に皮質拡延性抑制 (cortical spreading depression: CSD)を誘導して作成した片頭痛モデルを用いて、同側の三叉神経節切片でのCGRP mRNAの発現をin situ hybridizationで定量した。観察期間はCSD誘導72時間後までとした。正常マウスではCGRP mRNA産生は比較的小型のニューロンに観察された。CSD誘導後、三叉神経節組織におけるCGRP mRNA産生ニューロン密度に明らかな変化は観察されなかった。しかし、CSD誘導48時間および72時間後でのCGRP mRNA陽性ニューロンのサイズは、対照 (未処置)マウスに比較して有意に高値を示した。CGRP mRNA陽性ニューロンの細胞径を測定したところ、細胞径10-14 μm の三叉神経ニューロンの割合はCSD誘導48時間および72時間後において対照に比較すると有意に低値であった。一方、細胞径14-18 μmを示すニューロンの割合はCSD誘導24時間、48時間および72時間後において、対照に比較して有意に高値であった。 三叉神経節では、CGRPは比較的小型のニューロンに、同受容体は比較的大型のニューロンにそれぞれ発現していることが知られている (Eftekhari S, et al. J Pain 2013;14:1289-1293.)。我々が今回観察したCSD後に遅発的に認められたCGRP新生の大型ニューロン側へのシフトは、三叉神経節ニューロンのCGRPシグナル伝達がautocrineの機序で起こりやすくなることを示唆しており、片頭痛発作再発やCGRP関連薬剤への不応性に関連している可能性がある。また、片頭痛モデルにおいてCGRP mRNA産生変化が確認されたことは、CGRPを標的とした核酸医薬が片頭痛治療に有用であることを示している。
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