研究課題
パーキンソン病は中脳黒質のドーパミン神経細胞の脱落と、レビー小体と呼ばれる細胞内凝集体の形成を病理学的特徴とする神経変性疾患である。65歳以上の約1%に発症し、その多くは孤発性であるが10%に遺伝性パーキンソン病が見られる。順天堂大学脳神経内科の遺伝性パーキンソン病のゲノム ライブラリーの解析から、CHCHD2が常染色体優性パーキンソン病の原因遺伝子として同定された。その遺伝子産物CHCHD2はN末端にミトコンドリア標的シグナルを、C末端にcoild-coilドメインからなる構造をもち、ミトコンドリア膜間腔に局在することが知られている。 しかし、CHCHD2の生理学的および病理学的役割はいまだ不明である。遺伝性パーキンソン病の病態解明のため、CHCHD2欠損マウスを樹立した。CHCHD2 ノックアウトマウスは加齢依存的にp62陽性封入体が形成され、ドーパミン神経細胞が脱落した。その病態として、ミトコンドリア複合体活性の低下とミトコンドリア内膜構造の不整が観察された。そのようなミトコンドリアでは、ミトコンドリア内膜の融合を制御するOPA1のプロファイリングが未分化であった。CHCHD2はOPA1のレベルを制御することによりミトコンドリア形態に影響を与え、ミトコンドリア機能低下をもたらす。凝集体の形成機構に関しては、P62タンパク質の恒常性がミトコンドリアを介した非オートファジーシステムによって制御され、凝集体の形成をもたらすことが推測された。パーキンソン病の病態として、ミトコンドリア機能の低下が凝集体の形成と神経細胞死に関与することが示唆された。
すべて 2021
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