研究課題
① 哺乳類におけるIP6、IP7の各臓器における分布野生型マウスに関して、各臓器のIP6、IP7を測定した。測定した臓器は、脳、脊髄、肺、心臓、胃、腎臓、十二指腸、小腸、大腸、精巣、脾臓、肝臓、膵臓に関して測定を行った。その結果、以前より報告のあった中枢神経系(大脳、小脳、脊髄)に加えて、消化管系(胃、十二指腸、小腸、大腸)のIP6、IP7の含有量が、両方とも中枢神経系と比較しても10倍近く多く検出された。この点に関して、消化管系のどの細胞で多く産生されているかについてIP6をIP7にリン酸化する酵素であるイノシトール6リン酸キナーゼ(IP6K)(特に哺乳類には3つのサブ対応がある(IP6K1、IP6K2、IP6K3))の抗体を用いて免疫組織を行っているところである。さらに現在、以前より我々が所有しているIP6K2ノックアウトマウスに関して、野生型マウスと同様に各臓器でIP6、IP7の含有量を測定している。② 神経変性疾患、特に筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者におけるIP6、IP7、IP6Kの検討ALS患者剖検凍結脊髄を1症例得ることができた。頸髄と腰髄でIP6、IP7を測定したところ、IP7が非常に多く含有していることが明らかとなった。今後症例数を増やし、コントロール検体と比較していく予定である。さらに現在、血液中のIP6、IP7の測定に成功している。血液中には、白血球に多くIP6、IP7を含有することが明らかとなった(赤血球や血清にはほとんど存在しない)。ALS患者および年齢をマッチさせたコントロールにおいて末梢血30mlを採取して、そのIP6、IP7を測定したところ、ALS患者でIP6、IP7とも有意に多く含有していることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
今のところは、当初の計画どうり進んでいるが、筋萎縮性側索硬化症の剖検検体やコントロール剖検検体を得るのに時間がかかると思われる。
現在、筋萎縮性側索硬化症患者の剖検凍結脊髄を得るために当大学入院中の患者はもとより、他施設(日本ブレインバンクネットワークなど)の所有のもを供給してもらうために申請して検体を得るようにしている。さらにIP6、IP7の定量の誤差を少なくするために、今まで使用してきたHILICカラムを改良してより少量でも測定できる方法を検討中である。
今年度の実験動物の匹数が予定より少なかったために、購入費や飼育費があまりかからなかった。しかし。次年度多くの実験動物を使用予定のためにこれら資金に充てる予定である。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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