研究課題
<目的>気象関連痛に関与する気圧センシングメカニズムを明らかにする研究を行ってきた。2019年度には、前庭神経系の2次ニューロンである上前庭神経核細胞が気圧変化に興奮することを明らかにした。この結果から、内耳に気圧センシングシステムが存在する可能性を示した。そこで2020年度には責任チャネルの同定を目的に、浸透圧受容チャネル(TRPV4)を欠損したマウスを低気圧暴露し、上前庭神経核細胞の応答性を観察した。結果として、メスの TRPV4欠損マウスでは c-Fos 陽性細胞数に変化が見られなかったことからこのチャネルの関与が示唆された。さらに2021年度には機械受容チャネルTRPV1欠損マウス(両性)を低気圧に暴露したところ、c-Fos 陽性細胞数に変化が見られなかったことからこのチャネルの関与も示唆された。そこで本年は、前庭神経系の一次ニューロンである前庭神経節細胞の興奮性を観察する実験を行った。<方法と結果>前庭系を確実に刺激する方法として、正常マウスを3種混合麻酔を行い回転台にうつ伏せに固定し回転した。その後、麻酔下に頭蓋を取り出し、EDTAによる脱灰標本を作製した。そして抗c-Fos抗体を用い前庭神経節細胞を免疫染色した。抗体の濃度等をさまざまに変えてみたが、染色細胞はまったく観察できなかった。そこで、抗ARK抗体を用いて免疫染色を試したところ、明瞭に染色できることを確認した。以上の結果から,抗ARK抗体を用いることとし,気圧調整装置を用いて 1013hPa 環境から10分間で 973 hPa まで 40 hPa の減圧を行い、30分後に元の気圧に復圧した。対照群マウスについては減圧せずに1013 hPa 環境下に180分間置いた。復圧70分後、深麻酔下で4%パラホルムアルデヒド灌流固定し、脳の凍結切片から前庭神経節細胞を同定、抗ARK抗体による免疫染色を進めている。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 図書 (3件)
The Journal of Physiology
巻: 600 (3) ページ: 531-545
10.1113/JP282740.