本研究の目的は筋肉や組織の損傷に対する組織学的および機能的な治療に有効な細胞と細胞外因子の解明である。この目的のために、2種類のモデル動物を作成し、研究を推進した。モデル1)マウスの足底部を剥離する方法で、長期間の機械的刺激に対して疼痛行動を示す瘢痕性疼痛モデル動物を作成した。このモデルでは、von Frey刺激に対する反応閾値(以下機械閾値)の低下と足の腫脹が観察された。ワクシニアウイルス接種家兎の炎症皮膚抽出液(以下NTP)を局所投与した結果、腫脹の減弱、疼痛閾値の改善がみられた。 モデル2)前脛骨筋剥離モデルでは、足底部瘢痕モデルと同様に、機械閾値の低下と足の腫脹が観察された。NTPを局所投与した結果、腫脹の減弱および機械閾値の改善が得られた。 解析はモデル1)を用いて筋肉および周囲組織の再生に関わる細胞外環境と反応の分子機序の解明を目指した。具体的にはSham群、Sham+NTP治療群、瘢痕群、瘢痕+NTP治療群から、足底組織およびL4-L5部位のDRGを採取し、Total RNAを抽出。RT-PCR法とマイクロアレー法を用いて発現遺伝子を同定し、Gene set enrichment解析をした。DRGではTGF-beta signaling pathway、ECM-receptor interactionとNeurotrophin signaling pathwayは瘢痕手術後に活性化されましたが、NTP治療後に抑制された。また、 足底瘢痕組織ではECM-receptor interactionとCytokine-cytokine receptor interactionが活性化され、 ECM-receptor interactionがNTP治療で抑制が見られた。NTP治療で抑制されたカスケードが瘢痕やそれによる痛みの増悪に関与している可能性があるものと推察された。
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