研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、薬剤、多能性幹細胞およびdirect conversion法を有機的に融合させた発想・手法をもとに、失われた中脳ドパミン神経回路網の機能的な再生および形態的な再生を促す新規治療法の開発となる基盤を構築することである。 この目的のもと、これまでにヒトiPS細胞を用いて特定領域の神経細胞を誘導する技術を確立し、安定したプロトコールの作製に成功している。また実験動物への移植の手技を至適化した。2021年度はこれらの技術を用いて以下の成果を挙げた。 1. ヒトiPS細胞から線条体神経を選択的に誘導するプロトコールを確立した。具体的には、ヒトiPS細胞に各種化合物を順次、正確なタイミングで処置していくことで、線条体の前駆領域である外側基底核原基を誘導し、それらを成熟させることで線条体神経を誘導した。また現行法からの改良点として、組成既知(chemically-defined)の培地に置き換え、化合物ベースで誘導を行う方法を採用した。本研究成果は2021年度に論文として発表した(Amimoto et al., Stem Cell Res, 2021)。 2. ヒトiPS細胞にASCL1とLMC1Aの2つの遺伝子を導入することで、短期間でドパミン神経へ誘導する技術を開発した。現行の分化誘導法ではおよそ2ヶ月かかった誘導期間を、およそ2~3週間に短縮することができた。さらにこのヒトiPS細胞を細胞株として単離し、拡大培養を行い、リソースとして確立することにも成功した本研究成果は2021年度に論文として発表した(Nishimura et al., Stem Cells Dev, 2022)。
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