研究課題/領域番号 |
19K07856
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
片野 泰代 関西医科大学, 医学部, 准教授 (60469244)
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研究分担者 |
寿野 良二 関西医科大学, 医学部, 講師 (60447521)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | BEGAIN / 慢性疼痛 / 脊髄 / 神経回路 / 相互作用 |
研究実績の概要 |
慢性疼痛時には、体性感覚の伝達様式が変化し痛覚閾値の低下などの異常感覚が生じる。これまでに研究代表者は、慢性疼痛機序の解明を目的とした解析で、BEGAIN(brain enriched guanylate kinase associated protein)を病態発症に関わる新規分子として同定した。他方、慢性疼痛の伝達様式の変化として、脊髄内の神経回路の再編成が注目されている。これらの背景から本応募課題では、慢性疼痛時の脊髄内の神経回路の再編成におけるBEGAINの分子機序の解明と、BEGAINを標的とした創薬を目指している。本目的の達成には、BEGAINの相互作用分子を探索し、同定することが必要である。よって、BEGAINの相互作用分子の精製に必要なツールとして、これまでに作製した14種の抗BEGAIN抗体の免疫沈降の可否の検証と、リコンビナントマウスBEGAIN、あるいはBEGAINが相互作用すると考えられているPSD-95の大量発現と精製を行った。所有する抗BEGAIN抗体のいくつかは、リコンビナントBEGAINを用いた解析で、免疫沈降に使用可能であることが確認された。GSTタグを融合したBEGAINおよびPSD-95は、大腸菌の低温発現系で十分な発現量が確認できた。これらをGSTのaffinity精製およびゲルろ過により精製した。 また伝達様式の変化の解析には、BEGAIN陽性細胞の疼痛依存的な活性化と再編成後回路への関与を解析する必要がある。よって、本申請課題内ではBEGAIN陽性細胞を標識するために、BEGAINレポーターマウスを作製した。本マウスでは、蛍光レポーターとしてVenusを発現し、またドライバーマウスとして用いることも可能なように、Cre-組み換え酵素も発現するものである。本マウスを用いることで、脊髄後角において、神経細胞が標識されることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
BEGAINレポーターマウスのVenus蛍光にて、BEGAIN陽性細胞を可視化し、本細胞の慢性疼痛時における活性化を評価する予定であった。しかしながら、このVenusの蛍光強度が極めて弱く、BEGAIN陽性細胞を可視化することができなかった。よって、本マウスをドライバーマウスとして使用し、Cre組み換え酵素依存的にtdTomatoを発現するレポーターマウスと交配し、BEGAIN陽性細胞を可視化した。 他方、内在性のBEGAINはかなり難溶性であり、その可溶化にはUreaや一定濃度以上の界面活性剤が必要である。そして、十分量のBEGAINを可溶化する条件下において、免疫沈降およびpull downを遂行することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
BEGAINレポーターマウスのvenus蛍光によってBEGAIN陽性細胞を可視化できなかった。そのことから、本マウスをドライバーマウスとして使用し、Cre組み換え酵素依存的にtdTomatoを発現するレポーターマウスと交配し、BEGAIN陽性細胞を可視化することにした。この交配により、脊髄後角において、tdTomato陽性の神経細胞が可視化されている。今後これらの細胞に対し、既知のマーカー分子との共染色を実施、細胞の性格付けを進める。さらに、これらのマウスを用いて、慢性疼痛モデルマウスを作製することで、BEGAIN陽性細胞の慢性疼痛依存的な活性化や、慢性疼痛時に再編される回路での関与について明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の解析に関して、予定どおり進める事ができなかった。よって、本年度購入予定だった試薬に関して来年度に購入予定としたため。
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