高眼圧は緑内障発症リスクの一つであるが、内圧上昇と網膜変性の直接的関連性や分子機序は解明されていない。本研究では、水柱下培養装置を用いて網膜組織に加圧し、鉄イオン輸送蛋白質Lcn2と網膜変性との相関性を解析した。高眼圧に相当する50cm水柱圧下で培養した網膜では、正常眼圧である20cm水柱圧に比べて、Lcn2の発現が上昇し網膜神経節細胞(RGC)層でのグリア細胞増生が見られ、RGCの細胞死が増加していた。これら網膜変性病態は鉄イオンキレート剤によって抑制された。以上から本培養装置は内圧上昇と神経変性との直接的な因果関係を解明する上で有用で、Lcn2と鉄イオンの制御は治療標的であると示された。
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