研究実績の概要 |
酸化ストレスによるミトコンドリア障害は、急性腎障害の進行と慢性腎疾患への移行において重要な役割を果たすことが知られている。 細胞に酸化ストレスを負荷すると細胞のカルジオリピン(CL)の減少と過酸化CLの増加が起こる(Chen, Hui, et al. Anal Bioanal Chem 409, 2017)。CLは二つのリン酸基と四本の脂肪鎖を有するリン脂質の一種でありミトコンドリア膜に特異的に存在している。CLは電子伝達系のアッセンブリを支えており、その酸化や減少はミトコンドリア機能障害を惹起する。食品由来の生理活性成分は、腎臓病の栄養補助食品療法において長期にわたって注目されてきたがその効果およびメカニズムは不明である。 令和4年度は、食品由来の生理活性物質Aが酸化ストレス下の腎尿細管上皮 (HK-2) 細胞に対するミトコンドリアの改善効果とその機序について検討した。 生理活性物質Aは、活性酸素種のレベルを低下させ、ミトコンドリア依存性アポトーシス遺伝子の発現を減少させ、抗酸化遺伝子の発現を増加させることにより、酸化ストレスによる細胞死から HK-2 細胞を保護した。 なお、生理活性物質Aは分裂/融合関連遺伝子の発現を調節することにより、ミトコンドリアの分岐構造を回復し、長さとネットワークサイズを増加させることにより、ミトコンドリアのダイナミクスを改善した。
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