研究実績の概要 |
糖尿病性腎症は末期腎不全の最大の原因疾患であるが根本的な治療法が確立されておらず、腎症の発症メカニズムの解明と制御が重要な課題である。令和5年度は、食品由来の機能性物質が酸化ストレス下の腎尿細管上皮 (HK-2) 細胞のATP産生への影響を検討した。対照群のHK-2細胞に比較して、BSOのみで処理したHK-2細胞ではATP産生が44.5%顕著に減少した。 対照的に発酵食品由来の機能性成分であるフラジンの添加は、BSOグループに比較して ATP 産生量が有意に増加した。
ATP 産生はミトコンドリアの質だけでなく量にも密接に関係していると言われているが詳細は不明である。ATP 産生の向上に寄与する主な原因を明らかにするために、ミトコンドリア のDNAコピー数を定量することによってミトコンドリア含有量を評価した。BSOグループに比べ、濃度別(31.3μM, 62.5μM)のフラジン添加グループのミトコンドリアDNAコピー数の増加が見られなかった。 この結果は、フラジンによるATP 産生レベルの向上要因は、ミトコンドリア数の増加ではなく、ミトコンドリア自体の機能改善によるものと考えられる。 本研究では、フラジンがミトコンドリア機能を改善することにより、酸化ストレス下の細胞におけるATP産生を促進できることを明らかにした。発酵食品に含まれる機能性成分であるフラジンは糖尿病腎症の予防と治療に役立つ可能性が示唆された。
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