研究実績の概要 |
新型コロナ感染症 (COVID-19) のため、対面での音楽体操教室の実施が困難な状況が続いた。施設からの依頼に基づき、研究として、遠隔会議システムを用いた音楽体操教室を施設入所中の重度認知症患者を対象に行った。検証課題は3つ: 1) 遠隔会議システムをのセッティングが施設職員は可能か、2) モニター画面を通した体操を、認知症患者は施行できるか、3) 参加は継続加できるか。2カ所の施設、計20名の認知症高齢者に対し週1回・40分の音楽体操教室を、遠隔会議システムを用いて半年間行った。その結果、事前の講習により施設職員はシステムのセッティングが可能であった。モニター画面を通して参加者は、講師の指示に従い体操を行うことが出来た。そして、20名の参加者全員が、途中入院した2名を除いて半年間、継続することが出来た。前後で実施した神経心理検査に有意な変化は見られなかったが、それまで曜日に無頓着だった患者が「今日は体操の日だね」と言ったり、教室のない日にも自ら体操をしたり、生活上の変化がみられた。 方法論の確立のために並行して、健常高齢者を対象に同様の取り組みを行った。週1回・1時間の音楽体操教室を遠隔会議システムを用いて半年間行い、前後で神経心理検査を行った。112名 (平均年齢 70.7歳) の解析の結果、実行機能に有意な改善がみられた (Tabei, Front Aging Neurosci, 2023)。対面では女性の参加者が8割余りを占めるのに対し、今回は男性が過半数を占めた。アンケートでは、対面開催なら参加しなかったというひとが半数で、理由として場所に行くのが大変や人間関係の煩わしさが挙げられた (Satoh, Dement Geriatr Cogn DIsord-extra, 2023)。遠隔会議システムは、対面開催の代替手段ではあるが、僻地や島嶼部での活用に加え、男性の参加を促すという独自の意味があると思われた。
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