研究課題/領域番号 |
19K07870
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
永石 歓和 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (30544118)
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研究分担者 |
射場 浩介 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (60363686)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 糖尿病 / 骨粗鬆症 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、STZ誘導1型糖尿病モデルラット(STZ)およびOLETF2型糖尿病モデルラット(OLETF )における骨代謝異常に対するサイトアフェレーシスと細胞治療による有効性の検討を実施した。 はじめに、白血球除去媒体(ビーズあるいは不織布担体)を内含したミニカラムを用いたサイトアフェレーシスを行った。STZラットに白血球除去を行ったところ、血管の脆弱性が著しく、持続的な体外循環を実施するのは困難であった。一方OLETFラットは、回路内のヘパリン濃度を上昇させることで凝固傾向を抑制し体外循環が可能となった。両モデルともに、末梢血白血球分画、血小板数、末梢血単核球の炎症性サイトカイン発現等は体外循環の前後での有意な差異は見られなかった。電子顕微鏡観察により、カラム内のビーズおよび不織布には血小板や血漿成分の付着が多く観察されたが、白血球成分の付着は少数であり、生化学所見を裏付けるものと考えられた。 さらに、ヒト臍帯由来間葉系幹細胞(UC-MSC)を用いた細胞治療の有効性について検討を行った。UC-MSCは、免疫制御効果が高く、組織修復関連因子の分泌・発現や遊走能が高い。STZラットに髄腔内投与した細胞は、投与翌日および3日目まで局所で検出された。骨髄内投与および経静脈的投与後の骨組織において、海綿骨の骨梁の増加傾向が見られた。血清中の骨代謝マーカーTRACP5bは、細胞治療により低下する傾向が見られた。 さらに、細胞治療効果を最適化するためにUC-MSCをハイドロゲルマトリクスを用いて3次元培養し、細胞機能の賦活化を行った。3次元培養細胞では、2次元培養細胞に比較して骨形成性因子であるBMP、TGF-β1の分泌量が増加した。一方、同時に破骨細胞の活性化を促進する因子の発現も増加することが明らかになり、そのバランスを制御するメカニズムの解明が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1型および2型糖尿病モデル動物のサイトアフェレーシス療法およびMSCによる細胞治療を行ったが、サイトアフェレーシス療法による介入効果が得られず、その改変に長期間を要した。また、当初予定していた骨髄由来MSCによる骨密度や骨量・骨微細構造の有意な変化が得られず、由来組織の異なるMSC(UC-MSC)での検討に移行したことから、動物モデルの作製を含めて当初の予定よりも一部研究計画に遅れが生じた。一方、MSCの治療効果を最適化するための3次元培養による賦活化法を見出し、賦活化細胞由来液性因子の網羅的解析を行って、細胞が分泌する骨吸収・骨形成に関連する複数の生理活性物質を絞り込み、その再現性を明らかにする点は予定通りに実施した。
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今後の研究の推進方策 |
サイトアフェレーシスによる免疫細胞の活性制御や破骨細胞活性への制御効果が低いことが明らかになったため、今後は細胞療法による骨吸収・骨形成のバランス制御のメカニズムと、in vivoにおける治療効果に焦点を当てて解析を進める。これまでの解析で明らかにした骨吸収・骨形成の双方を促進する因子群について、その制御メカニズムと骨芽細胞、破骨細胞への作用機序を明らかにし、MSCによる細胞治療の有効性機序を明らかにする。さらに、これまでの検討から明らかにした病態モデルにおける介入時期と方法を用いて、賦活化したUC-MSCによる介入を行い、in vivoにおける骨密度や骨量、骨代謝マーカーへの検討を行い、骨代謝異常に対する治療効果を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
サイトアフェレーシスの条件検討に時間を要したことや、細胞由来液性因子の網羅的解析結果の分析とin vitro解析を主に実施したことから、高額なモデル動物の購入費や各種受託解析にかかわる費用が当初の予定よりも減少したことで、次年度使用額が生じた。また、骨組織および血液生化学所見の受託解析検体数が減少し、解析費用が減少した。これらの理由で、次年度使用額が発生した。 次年度については、最適化条件で賦活化したMSCによる糖尿病モデルラットへの介入実験(in vivo)を進めるため、購入する動物数が増加することから、動物購入費用として本年度の繰り越し分を使用する。また、賦活化細胞の形質解析を目的としたフローサイトメトリー用抗体、細胞外小胞の計測・解析(受託解析)やmiRNAの解析、質量分析・メタボローム解析、および骨組織のマイクロCT解析等に、次年度分の研究費を使用予定である。
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