令和4年度は、STZ誘導1型糖尿病モデルラット(STZ rat)を用いて、MSCの培養形態ならびに由来組織を変更した細胞を用いた治療介入の有効性を検討した。はじめに、ヒト臍帯由来間葉系幹細胞(UC-MSC)を用いて、従来の2次元培養細胞(2D-MSC)のほか、3次元的にスフェロイド形成させたMSC (Spheroid-MSC)を用いて、その細胞形質および細胞治療の有効性を検討した。Spheroid-MSCは、VEGF、HGF等の組織修復関連因子やPGE2等の免疫制御性因子の産生・分泌が上昇し、さらに細胞が長期生存することを明らかにした。ただ、STZ ratに対する全身投与では、明らかな骨密度や骨量の改善は得られなかった。一方で、UC-MSCの骨分化能が極めて低いことが明らかとなった。そこで、次に脂肪組織由来MSCを用いた解析を行った。脂肪由来MSCは、Spheroid-MSCの免疫制御性因子の産生・分泌はUC-MSCに比較して低いものの骨分化能は高く、アルカリホスファターゼの発現が亢進した。そこで、脂肪由来MSCを用いたSpheroid-MSCを骨髄内投与し、骨密度および骨構造の変化を解析したが、今回の検討では明らかな骨密度低下に対する抑制効果は得られていない。 期間全体を通して、STZ rat およびOLETF2型糖尿病モデルラット(OLETF rat)における骨代謝異常に対するサイトアフェレーシスおよびMSCを用いた細胞治療の効果を検討した。サイトアフェレーシスは、体外循環が想定よりも安定化せずに十分な治療効果が得られなかった。MSCによる細胞治療では、骨分化能が高い脂肪組織由来MSC、およびスフェロイド化したMSCを用いた解析を行った。いずれの細胞種、細胞形態においても、今回の治療介入法ではin vivoにおける有意な骨代謝異常に対する効果は確認されなかった。
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