研究課題
最近、高比重リポ蛋白コレステロール(high-density lipoprotein cholesterol:HDL-C)に加えて、酸化変性HDLに関して検討されるようになった。いくつかの酸化HDLの検出系があり、本研究課題では心血管病を来し得る酸化ストレス病態を中心に、酸化HDLのmultiple assaysによって酸化HDL種間の異同に基づいた所見を蓄積することを目指している。まず、サルコペニアの重度集団(平均年齢=83歳、平均HDL-C=65 mg/dL)と軽度集団(76歳、HDL-C=65 mg/dL)とで同時測定を行った。複数の酸化HDL種の中で、多酸化物反応型の酸化HDLは重度集団で有意に高値を示した(中央値=187 対150 U/mL、p<0.05)。内臓脂肪型肥満集団(平均年齢=49歳、平均HDL-C=49 mg/dL)と非肥満集団(49歳、HDL-C=59 mg/dL)とで同時測定を行うと、特にHDL主座型酸化ストレスマーカーが肥満集団で有意な高値を示した(平均値=40 対37 mOD/min、p<0.05)。さらに、睡眠時無呼吸症候群患者集団における持続陽圧呼吸療法前後で比べると、複数の酸化HDL種の中で多酸化物反応型の酸化HDLは有意に低下した(中央値=450 対328 U/mL、p<0.05)。また、喫煙者集団における禁煙療法前後でも特定の酸化HDL種において同様な結果が見られた。これらは、検出の方法や原理に依拠して、病態をより反映する酸化HDL種が存在しており、多面的に疾患解明に臨んだり、マーカーを適切に選択したりする必要性があることを示している。脂質・リポ蛋白マネージメントにあたっての酸化HDL種の臨床的意義について示唆に富む所見と考えられる。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
Arch Med Sci Atheroscler Dis
巻: 7 ページ: e-
Int J Cardiol
巻: 324 ページ: 193-198
10.1016/j.ijcard.2020.09.060