研究課題/領域番号 |
19K07874
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
三井田 孝 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80260545)
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研究分担者 |
平山 哲 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (10345506)
中川 沙織 新潟薬科大学, 薬学部, 准教授 (30410228)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オキシステロール / 質量分析 / 頸動脈プラーク / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
昨年度に確立したGC/MS法によるオキシステロールの多項目同時測定法の精密度を最初に検討した。検討したオキシステロールは、①4β-hydroxycholesterol、②cholesterol-5α,6α-epoxide、③cholesterol-5β,6β-epoxide、④7α-hydroxycholesterol、⑤7β-hydroxycholesterol、⑥7-ketocholesterol、⑦24S-hydroxycholesterol、⑧25-hydroxycholesterol、⑨27-hydroxycholesterolの9項目である。プール血清を作成し、キャプ付きのチューブに精度管理試料として分注・凍結保存した。これらを溶解して前処理を行い、各項目を3重測定して平均値と標準偏差を求め、変動係数を計算した。同時再現性では、①3.14%、②1.97%、③4.45%、④5.16%、⑤4.62%、⑥0.40%、⑦3.94%、⑧9.69%、⑨2.00%と良好であった。日差再現性は、①0.84%、②2.51%、③5.92%、④0.61%、⑤3.96%、⑥2.62%、⑦1.86%、⑧5.35%、⑨4.08%であり、良好な値が得られた。
次に2型糖尿病患者と健常対象者の9項目のオキシステロールを比較した。糖尿病患者では、cholesterol-5α,6α-epoxide、cholesterol-5β,6β-epoxideが有意に低く、7β-hydroxycholesterol、25-hydroxycholesterol、27-hydroxycholesterolが有意に高かった。それぞれの濃度を総コレステロールで割った相対濃度でも、27-hydroxycholesterol以外の項目は有意な差を認めた。さらに、糖尿病患者で施行した頸動脈エコーのプラークスコアは、25-hydroxycholesterolの相対濃度と有意な正の相関を認めた(r = 0.322, p=0.029)。以上より、25-hydroxycholesterolは2型糖尿病患者の頸動脈病変における有意な予測因子であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染拡大のため、実験室のある研究棟の使用が一時的に中止となった。また、患者の診療控えが顕著となり、2型糖尿病患者の同意取得が進まず、頸動脈エコーでのプラークの評価にも時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に得られた2型糖尿病患者のデータは、現在まとめて論文を執筆中である。2021年度は、メタボリックシンドロームの外来通院患者を対象として、オキシステロールに対する運動療法およびコレステロール吸収阻害剤の効果を調べる。コロナ禍で患者の登録が進まない可能性を考え、クロスオーバー試験によって評価する予定である。同時にEndoPADを用いて血管内皮機能も測定し、オキシステロールの濃度との関連を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、新型コロナウイルス感染症の蔓延のため、実験室のある研究棟が一時期閉鎖された。また、外来患者の診療控えや入院患者の減少のため、予定通りに患者検体を集めることが困難であった。また、当初は計画していた学会参加のための旅費が使用できなかった。さらに、共同研究施設である新潟薬科大学で、研究打ち合わせやセミナーを予定していたが、これも中止せざるを得なかった。これらはWeb会議を行ったため、実質的に使用した研究費が少なくなってしまった。
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