研究課題/領域番号 |
19K07878
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
井平 勝 藤田医科大学, 保健学研究科, 教授 (10290165)
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研究分担者 |
東本 祐紀 藤田医科大学, 医療科学部, 助教 (20569701)
吉川 哲史 藤田医科大学, 医学部, 教授 (80288472)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | LAMP / 中枢神経疾患 / multiplex LAMP / ポリジメチルシロキサン / マイクロ流路チップ |
研究実績の概要 |
近年、網羅的に複数病原体を検出する検査法を用いて症候別に病原体検出を行い、早期に適切な治療介入を行うことで、結果的に入院期間を短縮し医療経済的にもメリットがあることが示されている。我々は、簡便な遺伝子増幅法であるloop mediated isothermal amplification(LAMP)法によるヒトヘルペスウイルス感染症の迅速診断法の開発を進めてきたが、本研究では新規マイクロ・ナノ加工技術によるマイクロ流路を利用したLAMP増幅チップ(豊橋科学技術大学機械工学系柴田隆先生開発)を用いたMultiplex-LAMP法による症候別迅速診断法の構築を目的とした。本マイクロ流路チップは、シリコーン樹脂(PDMS ポリジメチルシロキサン)製で、マイクロ流路と半円球(容量3μl)の反応部からなる。試薬注入用マイクロ流路は、枝分かれし反応部につながるがそれぞれの反応部の自律的な分注を目的に狭窄部位がつくられている。反応部数に応じたmultiplex化が可能となるため、最大10種類の病原体が同時に検出できる。5種類のマイクロ流路LAMPに必要な反応液量は25μlで、これは一般的な反応チューブで行うLAMP法の1回分に相当するため、微量な検体で複数の病原体検索が可能となる。等温での核酸増幅が可能なLAMP法は、PCR法に比べ簡便、迅速、安価というPOCTとしてのアドバンテージがある。一方、定量性、multiplex化ではreal-time PCR法にアドバンテージがあり、これまでmultiplex LAMP法のハードルは高く一般的に応用されていない。我が国独自のLAMP法をグローバルな検査法として位置付けるために、簡易迅速な利点を生かしつつ網羅的に病原微生物を検出することでsyndromic testingとしての応用が可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
主な原因は、マイクロ流路チップ用機器の発売延期による研究計画の変更である。新たに採用したマイクロ流路チップの反応部にprimer混合液 2μlを分注、乾燥化してチップに封入テープを加えたガラス板で挟みこみマイクロ流路チップとした。 1)HHV-6B LAMP:マイクロチップ反応部にHHV-6 LAMP用primerを乾燥化(一部の反応部にはprimerを乾燥化せず陰性コントロールとした)、LAMP試薬と標的領域を含むplasmid混合液で反応部を満たした。65℃、60分間の反応後には、濁度を肉眼判定し陽性と陰性が識別可能であった。反応部の容積は3μlと極微のため色調変化による識別の必要性を考慮しHNB(ヒドロキシナフトールブル)による色調判定も検討し、識別を確認した。 2)αヘルペスウイルスLAMP:新しく設計したHSV-1、HSV-2 LAMP法では、標的領域を含んだplasmidを作成しDNAを抽出後、吸光度を測定してコピー数を決定した。3種(HSV-1, HSV-2, VZV)の標的領域を含むplasmidを用いて反応チューブ(200μl容器)によるそれぞれのLAMP法の特異性を確認した。HSV-1 LAMP法は、5x106コピー/反応以上のHSV-2 plasmidによりHSV-1 LAMPで交差反応が認められた。HSV-2 LAMP法は、交差反応を認めなかった。VZV LAMP法は、すでに交差反応性が認められないことを確認している。3種類のprimerを乾燥化したマイクロ流路LAMP法でも同様に特異性を確認したが、HSV-1 LAMP法でHSV-2 plasmidとの交差反応が確認された。さらにVZV LAMP法の標的領域を含むplasmidにおいてもHSV-1、HSV-2 LAMP法において陽性反応が認められたため流路封入中のコンタミネーションの可能性を含め検討を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、マイクロ流路LAMP法について特異性を確認している。最初に200μl反応チューブによる特異性を検討したが、HSV-1 LAMP法については、5×106/反応以上のHSV-2 plasmidによってHSV-1 LAMPの交差反応が認められた。この交差反応は50分の反応時間で認められたため、反応時間を短縮することで問題解決が可能と考えた。VZV plasmidでは、マイクロ流路LAMPのみでHSV-1,HSV-2 LAMP法との交差反応を認めた。マイクロ流路中の逆流の可能性についてはすでに検討されており否定されているため、コンタミネーションの可能性を含めさらに検討し問題解決を図る。その後、各標的領域のplasmidを段階希釈し、マイクロ流路LAMP 法によるHSV-1、HSV-2、VZVの感度を決定する。その後は、HHV-6、CMVの特異性、感度を確認し、十分な感度が得られればマイクロ流路LAMP法による中枢神経感染症診断パネルとして髄液から抽出したDNAをサンプルとして有用性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究開始当初は、栄研化学で、呼吸器感染症診断用の全自動小型遺伝子検査システムとしてSimprovaが2019年発売予定であったが発売の延期によって研究計画の修正を余儀なくされた。代わりにマイクロLAMPチップとして研究中のPDMSによるマイクロ流路チップを採用し検討することになった。Simprovaの代わりの機器としてはGenelyzerF3を代用とし1年目の予算を持ち越して昨年度購入とした。
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