研究実績の概要 |
本研究では、終末糖化産物(advanced glycation end-products (AGEs))の受容体(receptor for AGE (RAGE))が、骨格筋の委縮に関与するという仮説を提唱し、RAGEを介した骨格筋委縮に関しin vitro, in vivoモデル系を用いて、その機序を含めてRAGEの意義を解析する。8週齢のマウスに4週間、Dexamethasone (DEX)負荷ないしはLipopolysaccharide (LPS)負荷を行い腓腹筋筋量/体重比を比較した。興味深いことに、RAGE野生型マウスと比較して、RAGE欠失マウスに対するDEX負荷では腓腹筋筋量/体重比が有意に増加(WT control: 12.0±0.21 (mg/g BW), WT DEX: 11.2±0.13 (mg/g BW), RAGE-KO control: 11.3±0.08 (mg/g BW), RAGE-KO DEX: 11.7±0.22 (mg/g BW))し、LPS負荷では有意に減少(WT control: 11.6±0.15 (mg/g BW), WT LPS: 11.4±0.13 (mg/g BW), RAGE-KO control: 11.8±0.26 (mg/g BW), RAGE-KO LPS: 10.8±0.15 (mg/g BW))した。骨格筋の異化プロセス・同化プロセスにかかわる遺伝子発現・タンパク発現を確認することでRAGEを介した骨格筋委縮の機序の推定を行った。DEX負荷後に採取した腓腹筋を用いて骨格筋のタンパク異化・同化にかかわる遺伝子の発現の解析を行ったところ、Klf15(WT control: 1.00±0.11 , WT DEX: 1.14±0.09, RAGE-KO control: 1.25±0.06, RAGE-KO DEX: 1.07±0.02)とREDD1(WT control: 1.00±0.16 , WT DEX: 1.36±0.76, RAGE-KO control: 2.25±0.81, RAGE-KO DEX:0.42±0.05)が関与する可能性が示唆された。Klf15・REDD1は共にステロイドによる筋萎縮に関わることが証明されている分子であるが、RAGEを介した骨格筋委縮がこの経路を介することが示唆される結果であった。現在、C2C12細胞を用いたステロイドによる骨格筋分化誘導阻害モデルにより詳細な機序を検討中である。
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