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2019 年度 実施状況報告書

漢方薬麻黄湯による抗RSウイルス作用機序とその有効成分の解析

研究課題

研究課題/領域番号 19K07881
研究機関福岡大学

研究代表者

鍋島 茂樹  福岡大学, 医学部, 教授 (50304796)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードRSウイルス / 麻黄湯
研究実績の概要

RSウイルス感染症は時に重篤化する小児呼吸器感染症であるが、有効な治療薬はまだない。一方、麻黄湯はインフルエンザなどの急性熱性感染症に使われている漢方薬であるが、RSウイルス感染症に対する効果は不明である。そこで、麻黄湯の抗RSウイルス作用とそのメカニズムに関して検討した。
【方法】in vitroにて麻黄湯と同時にA型RSウイルス(RSV)をA549細胞に感染させ、一定時間後に細胞内または培養溶液中のウイルス量をプラーク法(titer)、PCR、ウエスタンブロット等にて解析した。またマウスにRSVを経鼻感染させ、麻黄湯を連日投与し5日後の肺胞洗浄液のウイルス量を測定した。麻黄湯とRSV のG-proteinの結合は、表面プラズモン共鳴法(Biacore)を用いて検証した。
【成績】麻黄湯と同時にRSVをA549細胞に感染させると、6時間後の細胞内ウイルスRNAおよび24時間後のtiterは著明に低下した。麻黄湯を構成する4つの生薬のうち、麻黄と経皮にのみその作用が認められた。また、in vitroの4℃環境下で、ウイルスを細胞表面に吸着させる際に麻黄湯を添加すると、細胞表面のウイルス蛋白およびウイルスRNAは減少したため、麻黄湯はウイルスの吸着を阻害することがわかった。さらに、Biacoreにて、麻黄湯とRSウイルスの外被蛋白であるG蛋白が強固に結合することが確かめられた。マウスによるウイルス感染実験では、感染5日目の肺胞洗浄液titerおよび肺組織所見は、麻黄湯投与群で著明に改善した。
【結論】in vitroとマウス感染実験において、麻黄湯はRSウイルス感染を阻害する効果があることがわかった。そのメカニズムとして宿主受容体への結合に関与するウイルスG蛋白に麻黄湯が結合し、細胞表面のレセプターにウイルスが吸着するのを阻害するメカニズムが考えられた。以上より麻黄湯は、RSウイルス感染症の治療薬として有効である可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

実験系が確立し、実験者の技術がほぼ習熟できていること。また、大きな失敗がなく進んでいることによる。

今後の研究の推進方策

in vitroの感染実験において、麻黄湯はRSウイルスのGタンパクに結合し、細胞表面のレセプターに結合することを阻害することがわかった。in vivoのマウス感染実験でも有効性が示唆された。今後は、麻黄湯のどのような成分がウイルスに結合するのかをマススペクトロメトリー等によって調べることと、宿主の自然免疫に対する影響はないかを検討していく。また、マウス感染実験においても、さらにサイトカインの動向を詳しく調べる必要がある。先のことにはなるが、ヒトでの臨床試験も視野にいれる。

次年度使用額が生じた理由

実験に使用する試薬代や消耗品が少なくて済んだこと、国際学会への参加を行わなかったこと、等による。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] Analysis of molecular mechanism of the anti-Respiratory Syncytial virus (RSV) activity by Maoto2019

    • 著者名/発表者名
      藤兼亜耶、坂本篤彦、廣松賢治、鍋島茂樹
    • 学会等名
      第68回日本ウイルス学会学術集会

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公開日: 2021-01-27  

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