研究課題/領域番号 |
19K07884
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高野 淳 東京大学, 医科学研究所, 特任講師 (50582607)
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研究分担者 |
醍醐 弥太郎 東京大学, 医科学研究所, 特任教授 (30345029)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 分子標的治療 |
研究実績の概要 |
肺がん、口腔がんの新規バイオマーカー、治療標的分子候補URST1, OASEP1に関する解析を中心に行った。 URST1:siRNAで肺がん、口腔がん細胞中のURST1をノックダウンするとG2/M arrestをきたし肺がん、口腔がん細胞の増殖が有意に抑制されることを確認した。一方、肺がん、口腔がん細胞にURST1を過剰発現させるとがん細胞の増殖が有意に促進した。以上より、URST1はがん細胞の増殖、分裂に重要なタンパクであると考えらえた。URST1を機能阻害する低分子化合物を添加すると肺がん、口腔がん細胞の増殖が有意に抑制された。その細胞動態をTime-lapseで継時的に観察しえた。 OASEP1:siRNAで口腔がん細胞中のOASEP1をノックダウンすると有意に細胞増殖が抑制された。一方、口腔がん細胞にOASEP1を強制発現させると、有意にがん細胞の増殖が亢進することも確認された。更に、OASEP1は分泌タンパクであり、OASEP1タンパクを口腔がん細胞の培養上清中に加えると、濃度依存性にがん細胞の増殖が亢進した。OASEP1とレセプターの結合について、IP-Western blotting, 免疫細胞染色について確認しえた。以上より、OASEP1は、そのレセプターを介して、がん細胞の増殖をautocrine/paracrine pathwayで促進していると考えた。更にURST1, OASEP1に関係する下流遺伝子をGeneChipを用いて検討した。siRNAでノックダウン後に変化する遺伝子を抽出し、増殖に関連するpathwayが抽出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
URST1:siRNAでURST1をノックダウンするとG2/M arrestをきたしがん細胞の増殖が抑制されることが確認された。一方、強制発現によりURST1を肺がん細胞に過剰発現させると増殖が促進していた。また、これまでの口腔がん組織の免疫組織染色による検討結果からURST1は肺がん、口腔がんの予後に有意に相関していた。以上より、URST1は肺がん、口腔がんの予後バイオマーカー候補として有望であった。また、URST1を機能阻害する低分子化合物を添加により、肺がん、口腔がん細胞の増殖が抑制された。以上より、URST1をターゲットとして、臨床応用の可能性も十分期待される。 OASEP1:siRNAで口腔がん細胞のOASEP1をノックダウンすると有意に細胞増殖が抑制された。一方、口腔がん細胞にOASEP1を強制発現させると、有意に増殖が亢進した。また、これまでの口腔がん組織の免疫組織染色による検討結果からOASEP1発現は口腔がんの予後に有意に相関していた。以上より、OASEP1は口腔がんの予後バイオマーカー候補として有望であった。更に、機能解析についても検討がなされた。OASEP1は分泌タンパクであり、OASEP1タンパクを口腔がん細胞の培養上清中に加えると、濃度依存性にがん細胞の増殖が亢進した。OASEP1とレセプターの結合について、IP-Western blotting, 免疫細胞染色について確認しえた。以上より、OASEP1は、そのレセプターを介して、がん細胞の増殖をautocrine/paracrine pathwayで促進していると考えた。 更にURST1, OASEP1に関係する下流遺伝子をGeneChipを用いて検討し、がん細胞の増殖に関連するpathwayが抽出された。 URST1, OASEP1タンパクいずれにおいてもおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
URST1:URST1が、がん細胞の増殖に関与する機序については、Genechipで抽出したPathwayの解析を行う。また、これまでの口腔がん組織の免疫組織染色による検討結果からURST1は肺がん、口腔がんの予後に有意については、症例数を増やした検討を行う。 また、URST1を機能阻害する低分子化合物もより毒性が低い化合物が生成されたとの報告も学会で報告がされており、可能であれば入手して、URST1をターゲットとした臨床応用を進めていく。 一方、OASEP1は分泌タンパクであり、OASEP1とレセプターの結合について、IP-Western blotting, OASEP1を蛍光標識して、Time-lapseで継時的にOASEP1の働きについて確認する。 更に、口腔がん、肺がんについては、組織内のHeterogenityが薬剤耐性、再発に問題となっている。Single cell 解析を行う機器が導入される予定であり、がん組織内でのURST1, OASEP1の発現状況を調べたり、血液中のcirculating tumor cellを抽出して、URST1, OASEP1遺伝子の発現状況を調べることで、将来的な高感度バイオマーカーの検出へとつなげていきたい。
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