研究実績の概要 |
多くの加齢性疾患(肥満、動脈硬化、神経疾患、肺線維症、肝硬変、CKD等)で、慢性炎症・繊維化が病態進展の一因であることが判明しつつあり、新たな老化概念として「老化・加齢疾患の原因である慢性炎症」が注目されている。一方で我々はこれまで解糖系酵素ホスホグリセリン酸ムターゼPGAMに注目して「老化と代謝」連関を研究する過程で、老化・代謝から炎症の端緒を見出す検証から「慢性炎症から加齢性疾患へ」という課題との接点を見出した。 よって本研究課題では「老化とリンクした慢性炎症の代謝分子機構解明」を目的とし、特に解糖系代謝酵素PGAMと慢性炎症連関に注目し研究をおこなう。我々はこれまでにPGAMの多様な生物学的効果を見出しており、その中でもPGAM発現によって変動する解糖系代謝が慢性炎症とリンクすることが予想された。これを検証するために我々の持つ種々のPGAMモデルマウス(PGAM-TG, cKO, 変異型TGマウス)を用いてinvivo検証を行う。本年度はそれに先立ち、PGAMのアイソフォームによる生物学的効果の違いを検証した。その結果、PGAMの2つのアイソフォーム(PGAM1, PGAM2)のいずれにおいても解糖系代謝制御および腫瘍増殖促進効果を示すことを明らかにした。この結果より、マウスを用いたinvivo解析を行う上で、各組織におけるアイソフォームの発現パターンによる制限を受けないことが推測された。
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