研究実績の概要 |
多くの加齢性疾患(肥満、動脈硬化、神経疾患、肺線維症、肝硬変、CKD等)で、慢性炎症・繊維化が病態進展の一因であることが判明しつつあり、新たな老化概念として「老化・加齢疾患の原因である慢性炎症」が注目されている。一方で我々はこれまで解糖系酵素ホスホグリセリン酸ムターゼPGAMに注目して「老化と代謝」連関を研究する過程で、老化・代謝から炎症の端緒を見出す検証から「慢性炎症から加齢性疾患へ」という課題との接点を見出した。 従って本研究課題では「老化とリンクした慢性炎症の代謝分子機構解明」を目的とし、特に解糖系代謝酵素PGAMと慢性炎症連関に注目し研究をおこなう。我々はこれまでにPGAMの多様な生物学的効果を見出しており、その中でもPGAM発現によって変動する解糖系代謝が慢性炎症とリンクすることが予想された。本年度は癌細胞におけるPGAMによる新規解糖系制御機構を解析した。PGAMはチェックポイントキナーゼとして知られるChk1と結合することを見出し、PGAM-Chk1の結合によりその下流で解糖系因子群が転写制御を受け解糖系が正に制御されることを報告した(Mikawa et al, iScience, 2020)。さらにPGAM1のT細胞特異的ノックアウトマウスの解析より、T細胞依存炎症応答におけるPGAMの重要性を明らかにし報告したToriyama et al, Communications Biology, 2020)
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