研究課題/領域番号 |
19K07889
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研究機関 | 天理医療大学 |
研究代表者 |
上岡 樹生 天理医療大学, 医療学部, 特別研究員 (00274374)
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研究分担者 |
今村 潤 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (30232614)
森本 徳仁 高知学園大学, 健康科学部, 教授 (60398055)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 動脈硬化 / 幼若血小板分画 |
研究実績の概要 |
高知大学医学部附属病院検査部生理検査システムから2008年から2017年の期間中、心エコー検査にて大動脈弁狭窄症と診断され、かつ幼若血小板分画を測定した18例のAS群と、コントロール群18例の2群間の検定をMan-Whitney検定を行った。AS群とコントロール群において、AS群でのIPFは有意に高値(p=0.04)を示し、血小板数は有意に低値傾向(p=0.04)を示した。ASを重症度別にみると、IPFはコントロール群と有意差のあったものは中等症ASのみであったが、血小板数についてはASの進行により有意に低値傾向(p=0.037)であった。IPFと大動脈弁通過血流速度は正の相関を認めた。IPFと大動脈弁口面積、大動脈弁口面積と大動脈弁通過血流速度については負の相関を認めた。抗凝固薬・抗血小板薬の投薬群を含めた統計解析では、IPF(p=0.39)、血小板数(p=0.08)ともに、AS群、コントロール群との比較で有意差は認められなかった。ASでは有意にIPFが高値傾向となり、血小板数は低値傾向となるため、病変部での血小板の消費が影響している可能性が考えられた。IPFと大動脈弁通過血流速度に正の相関、IPFと大動脈弁口面積に同程度の負の相関を認めた。このため、ASにおけるIPF高値傾向に影響している要因が、流速か弁石灰化によるものかはっきりしない結果となったが、ASの病態を考慮すると弁石灰化の影響があると推察された。抗凝固薬・抗血小板薬の投薬患者との比較では、統計学的に有意差はなかったが、投薬によりIPFは低値傾向となり、流速による影響よりは弁石灰化が血小板数およびIPFに関与していることが示唆された。これらの結果より、AS群では非弁膜症群に比し、IPFは高値傾向となり、血小板数は低値傾向となっていた。このため、動脈硬化性変化による血小板消費が、ASにおけるIPF高値傾向に影響している可能性が考えられた。IPF測定はASの存在診断や動脈硬化を評価する有用な検査となる可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
世界的な流通の滞りにより、物品の発注が機能しない中、過去のデータの掘り出しにより、一定の成果を上げることが出来ている。しかしながら、このデータの抽出も現在の職場が研究施設とは離れた場所であり、研究施設への出入り制限がコロナ禍の中で厳しい現在、大きな成果とはなっていない。さらに、学会活動の自粛が響いており、成果の発信が困難な状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究においては、新型コロナウイルスの蔓延により成果発表・消耗品購入などに困難があり、計上した予算を十分に活用できていなかった。次年度は本研究を現在の研究施設である天理医療大学へと移し、特別研究員として本研究を継続していく。新研究室での研究遂行となるため、試薬類以外にも備品の計上が発生する可能性があり、柔軟に予算の執行を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの蔓延により、物品購入や学会活動が制限されており、研究活動には困難が伴っていた。次年度は若干制限が緩和される見込みであると同時に、前任地での研究活動継続を中断とする予定である。現在の勤務地において特別研究員の申請が受理されており、次年度は研究費を移管した上で研究を遂行できるものと見込まれる。従って、今年度には剰余金が一定額計上される結果となったものの、次年度には新研究室での備品などを計上する必要が出てくるため、当該研究費を有効に活用できるものと考える。
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