研究課題/領域番号 |
19K07890
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
柴田 舞欧 九州大学, 医学研究院, 助教 (20734982)
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研究分担者 |
平林 直樹 九州大学, 伊都診療所, 講師 (20784474)
二宮 利治 九州大学, 医学研究院, 教授 (30571765)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 情緒的孤独感 / 認知症 / 地域一般住民 / 高齢者 / 社会的孤立 |
研究実績の概要 |
2019年度は、地域住民約3000人の住民健診、および郵送で健康状態のアンケート調査を実施した。生活習慣病や認知症の発症の疑いがあれば、本人への調査や医療機関への調査を行い、症例を会議で検討し診断を確定させた。2012年から5年間認知症を追跡したデータセットを作成し、以下の研究結果が得られた。 【目的】日本人地域高齢一般住民における孤独感と認知症リスクとの関連を調査する。 【方法】認知症のない65歳以上の日本人地域一般住民1,141人を対象に、中央値5.0年間の前向き追跡調査を行った(追跡率100%)。孤独感とその下位尺度である社会的孤独感と情緒的孤独感をde Jong Gierveld Loneliness Scale短縮版を用いて評価した。Cox比例ハザードモデルを用いて、背景因子、生活習慣因子、身体的因子、社会的孤立因子、うつ病を調整し、認知症発症リスクに対する各孤独感のハザード比(HR)を算出した。 【結果】追跡期間中に114人が認知症を発症した。認知症の性・年齢調整発症率は、全孤独感および情緒的孤独感を有する対象者が、孤独感を有しない対象者よりも有意に高かった。全孤独感および情緒的孤独感を有する対象者が認知症を発症する多変量調整後HR(95%信頼区間)は、孤独感を有しない対象者に比べ、それぞれ1.61(1.08-2.40)、1.66(1.08-2.55)であった。一方、社会的孤独感と認知症発症との間に有意な関連は認めなかった。社会的孤立因子の層別解析では、パートナー有り、同居、親戚や友人とほとんど交流がない人で、情緒的孤独に関連する認知症発症の過剰リスクが観察されたが、パートナー無し、独居、友人や親戚と頻繁に交流がある人ではそのような関連性は消失した。 【結論】他者との交流を支援し、孤独感、特に情緒的孤独感を改善することが、地域一般高齢者の認知症予防に有効な可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、地域住民約3000人の住民健診、および郵送で健康状態のアンケート調査を実施した。生活習慣病や認知症の発症の疑いがあれば、本人への調査や医療機関への調査を行い、症例を会議で検討し診断を確定させた。 本年は、認知症発症のデータを整備し、2012年から5年間認知症を追跡したデータセットを作成した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、新型コロナ感染症流行の影響で、病院へのカルテ閲覧調査、住民宅への訪問調査は中断し、健康調査の住民健診は8,9月へ延期となっている。調査は若干遅れる可能性があるが、当面はこれまで収集した臨床情報を整理し、データ整備、データセット作成、解析等を中心に行い、年度の後半で追跡調査を行っていく予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は既存の資料の整理とデータ整備を中心に行った。自分とボランティアの大学院生を中心に実施したため、人件費を節約できた。また、2月の学会発表が新型コロナ感染症流行によりWeb開催となったため、旅費を使用しなかった。次年度以降は、調査員の人件費や調査費用、調査・データ整備用の物品等の経費、学会発表の旅費が必要となる予定である。
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