研究課題
筋肉や筋力の低下を主とするサルコペニアの原因として、血管障害に伴う二次性サルコペニアが重要である。昨年度の培養骨格筋細胞やマウスを使用したin vitroおよびin vivo研究による骨格筋とミトコンドリアとの関連についての検討に引き続き、本年度は培養平滑筋細胞や易動脈硬化モデル(Apo Eノックアウト(ApoE KO))マウスおよびC57BL6(Wild type (WT))マウスを用いて血管老化とミトコンドリアとの関連についての研究を進展させた。酸化LDLを血管平滑筋細胞に添加すると、ミトコンドリアダイナミスクは過度のFissionを呈し、酸化ストレス増大やATP産生能低下を惹起し細胞老化をもたらした。これにアンギオテンシンII type1受容体ブロッカー(ARB)を投与すると、過度のFissionが低減し、かつ異常ミトコンドリアを排除するミトコンドリア選択的オートファジーいわゆるマイトファジーの誘導を介してミトコンドリア機能が回復し、結果細胞老化が改善した。マウス実験でも同様に、ApoE KOマウス血管ではWT マウスのそれと比較しミトコンドリアダイナミクスは過度にFission化し酸化ストレス増大やATP産生低下を介して血管老化が高度であった。ApoE KOマウスにARBを投与すると、ミトコンドリアダイナミクスのバランス異常が改善し、かつマイトファジーが誘導されることで異常ミトコンドリアが除去され、結果血管老化が改善した。こうしたARBによるマイトファジーは、一般的なオートファジーに必須のAtg5/7やLC3を必要とせず、メンブレントラフィッキング因子のRab9依存性のオルタナティブオートファジーを由来としていることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
基礎研究は想定よりも早く進捗しており、すでに2021年度に論文を発表するに至っており、現在すでに二編目を作成中の段階にある。一方、臨床研究に関しては、covid-19感染症の影響により当該講座で行っている地域在住高齢者を対象としたコホート研究が中断されている状況にあることから、高齢者フレイル・サルコペニアの評価と血液サンプルを用いた検討は遅れている状況にある。以上を鑑みて、総じて概ね順調に進展していると判断した。
・骨格筋・サルコペニア・ミトコンドリア質管理に関する現在遂行中実験の論文発表を行う。・Covid-19感染状況が落ち着き、地域在住高齢者対象コホート研究の再開ができれば、血液サンプルを用いた臨床研究を進める。・すでに当該研究室で保管し患者群から使用同意を得ている心血管疾患群の血液サンプルを用いた臨床研究を、上記コホート研究の代替研究として遂行する。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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