研究課題/領域番号 |
19K07897
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
川田 浩志 東海大学, 医学部, 教授 (20276801)
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研究分担者 |
安藤 潔 東海大学, 医学部, 教授 (70176014)
鈴木 利貴央 東海大学, 医学部, 講師 (70514371)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高濃度のVC(H-VC) / 鉄濃度 / 中枢神経系(CNS)へ浸潤したリンパ腫 / VitaminC (VC) |
研究実績の概要 |
中枢神経系(CNS)へ浸潤したリンパ腫は、血液脳関門(BBB)を移行できる薬剤が限られており、予後不良である。BBBに存在する輸送系であるGLUT-1は、興味深いことにvitamin C (VC)をCNS内へ輸送しVCを高濃度に保持する機構が備わっていると報告されている。これまでに白血病細胞株に対して高濃度 のVC (H-VC) が、NF-κB抑制による腫瘍選択的なapoptosis 誘導および増殖抑制効果を確認し報告をしてきた。 本研究では、NF-κBが病態に関与している悪性リンパ腫のCNS病変に対しH-VC投与が新たな治療戦略になり得るかマウスモデルで明らかにすることを目的とした。 本年度は、non-GCB型であるRI-1、OCI-Ly3、OCI-Ly10と胚中心型(GCB型)のHT、Toledoのリンパ腫細胞株を用いてVCに対するin vitro評価を行うとともに、in vivo評価系としてCNS浸潤リンパ腫モデルの手技習得に着手した。 ①マウスモデルは麻酔下で頭蓋を電動ドリルで薄くした後、マイクロシリンジにより細胞を移植する手技を習得した。NOD/SCIDやヌードマウスでは生着が認められず、マウスの種を変更して実施する予定である。 ②in vitroにおいて細胞増殖試験を行った結果、全ての細胞株においてH-VCで増殖抑制が認められた。non-GCB型は、GCB型よりVCに対する増殖抑制効果が若干弱いことが確認されたことからnon-GCB型は、脳内へのVC移行濃度をより高くしなければならない可能性が推測された。さらにアポトーシス解析によりVCとFesin(鉄)を併用するとVCのアポトーシス誘導効果は減弱し、鉄キレート剤であるdeferasiroxを処理することでVCの効果が回復することを確認した。このことから脳組織内の鉄濃度を下げる検討が重要になると推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の予定では、マウスモデルを確立することが目的であったが、新規マウスモデルの立ち上げや下記の検討等に難渋した。 1.マウス脳内へリンパ腫を移植する手技においては習得済みであり、再現可能と考えている。まだ生着が安定しないが、手技的な問題ではなく、超免疫不全マウス(NOG)を用いることで改善できると推測している。当初予定していたluciferase遺伝子を導入した細胞を作製し移植する予定であったが、頭蓋骨中の細胞を観察できない可能性があると判断し、VC投薬後の脳組織を採取することにより免疫組織化学的な解析および移植した腫瘍の増大を観察することとした。luciferase遺伝子を導入した細胞の作製には着手している。 2.マウスCNS内へのVCの至適移行条件の検討として脳組織内のVC含有量を測定することに関しては、当初予定していたHPLCの機器が使用できなくなり測定方法を変更し測定Kitにより実施することにした。当該年度に至適条件の結果は得られていないが、測定Kitは購入済みであり、マウスにVCを投与した後、脳組織を採取する時間およびVC投与量等、条件を試行錯誤しサンプリングして保存してある。今後、測定することにより至適条件の決定を行いたい。 3.今後、脳組織内の非ヘム鉄を減じる方法を検討して脳内低鉄マウスを作り出す予定である。in vitroの実験から鉄濃度が高いとVCのアポトーシス誘導効果が認められなくなってしまうことを確認しているため、この検討は、今後のCNS浸潤リンパ腫モデルマウスを用いた H-VCの効果を実験するに至り、結果を大きく左右するような重要事項だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、脳組織内へのVCの移行条件および鉄濃度を下げる条件の検討を迅速に行い、マウス脳内へヒトnon-GCBリンパ腫細胞を移植したモデルによりH-VCの効果が最大限に発揮できる至適条件を決定する。さらに、脳内へ移植した腫瘍細胞の増殖抑制効果を検討する。 1、予後が不良であるCNSへ浸潤した血液悪性腫瘍に対する新たな治療戦略となり得るか評価する。2、現在の大量の抗がん剤を用いた治療で有害事象が発現しやすい高齢者においても適応可能か判断するため、78週齢まであらかじめ加齢させたマウスを用いての評価も行う。さらに、3、今まで明らかにしてきたVCのapoptosis誘導の機序等について、in vitro実験によって解析し、non-GCBリンパ腫に対する高濃度VCの作用メカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、予定していたよりも消耗品の購入が少なかったが、次年度は、マウス実験をNOGマウスに変更する予定なので、実験動物購入費と飼育費に多くの経費が必要となる。その他は、VCや鉄濃度の測定キット等の消耗品および細胞培養等の消耗品である。
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