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2022 年度 実施状況報告書

ポリユビキチン鎖各型の定量に基づく加齢性疾患の病態解析

研究課題

研究課題/領域番号 19K07899
研究機関東京慈恵会医科大学

研究代表者

高田 耕司  東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (30179452)

研究分担者 松浦 知和  東京慈恵会医科大学, 医学部, 客員教授 (30199749)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワードユビキチン / ポリユビキチン鎖 / プロテオスタシス / 老化 / 細胞老化 / 正常二倍体細胞 / 加齢性疾患
研究実績の概要

ユビキチン-プロテアソーム系やオートファジー系が担う不要なタンパク質の合目的分解は、真核生物の細胞内タンパク質の恒常性(プロテオスタシス)の維持に不可欠である。近年、老化に伴って、両分解系の機能が低下し、加齢性疾患の発症リスクとなる可能性が多数報告されている。そこで本研究では、両系の分解シグナルであるポリユビキチン鎖に着目し、プロテオスタシスに基づく老化マーカーとしての意義を検討する。ポリユビキチン鎖を認識するFK2抗体を固相と検出に用いたFK2-FK2 sandwich ELISAは、3種類(K48鎖,K64鎖,M1鎖)の各ポリユビキチン長鎖を区別なく検出し、測定値は全鎖総量に対応することが明確となった。各鎖型に特異的な測定系を確立するため、市販の各鎖(K48鎖,K64鎖,M1鎖)特異抗体を検出に用いた様々なFK2-各抗体 sandwich ELISAを検証したが、どの組み合わせも実用レベルの感度や特異性を示さなかった。ヒト正常二倍体線維芽細胞TIG-1を用いた検討では、細胞集団倍加数(PDL)62を超えると同細胞の倍加速度が遅延し、その後、肥大扁平化やSA-β-galの発現などの複製老化の特徴を示したため、PDL 24~34群、43~56群、62~72群の細胞から、1% Triton X-100可溶化画分とその不溶成分を2% SDSで可溶化した画分を調製し、分画ごとに各群のポリユビキチン鎖量を比較した。しかし、予想に反して、各平均値に有意差はなく、細胞老化の影響を見出せなかった。TIG-1細胞の老化とプロテアソーム活性の関係についても同様の結果を得ているが、実験手法の見直しなどの再検証を予定している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

初年度はメチル基転移酵素SETD8阻害による細胞老化モデル実験系を用いて細胞内ポリユビキチン鎖の定量解析の問題点を解決し、基盤となる実験手技の標準作業手順を確立した。しかし、その後、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応に伴う教育・入試等の責務の急激な増加により、研究活動の停止を余儀なくされ、2020年度の進捗に関して記載できる事項はない。2021~2022年度もCOVID-19以前ほどの研究時間を確保できない状況が続いたが、2つの重要課題、「ポリユビキチン鎖各型に特異的なELISAの構築」と「ヒト正常二倍体線維芽細胞の継代培養による細胞老化実験系」に取り組み、区切りとなる結論を得た。また、現在までの結果から派生した課題として、「温熱・寒冷曝露に伴う細胞内ポリユビキチン鎖量の変動」や「エクソソーム(細胞外顆粒)のポリユビキチン鎖含有量」などに関して予備的な検討を進めている。全体的に進捗が遅れているが、最終年度に主要な目的を達成できるように研究環境を刷新し、準備を進めている。

今後の研究の推進方策

COVID-19を背景とした教育・研究環境の変化のため、当初計画していた目標をすべて達成することは困難な状況に至った。そこで、ユビキチン化現象に基づく加齢性疾患の病態解析に向けて、次の2課題を優先的に推進する。
課題1:老化モデルマウスの細胞・組織のポリユビキチン鎖定量解析
課題2:ヒト検体(血球細胞、唾液、爪等)のポリユビキチン鎖定量解析
これらの課題の実施には、研究分担者との打ち合わせなど十分な準備期間が必要であるため、その間を利用して、TIG-1細胞を用いた老化実験の結果を再検証する。時間的に可能であれば、別のヒト正常二倍体細胞を用いた検討も行いたい。また、ポリユビキチン鎖には標的タンパク質に付加した「結合型」以外に、ユビキチン化反応の基質として利用される「遊離型」の存在も知られている。これは本研究のポリユビキチン鎖定量の問題点であり、プロテオスタシスの状態を適正に評価するには、それらを区別して測定することが望ましい。そこで、これを新たな目標に設定し、結合型・遊離型ポリユビキチン鎖の分別定量を可能とする方法について検討する。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応に伴う教育・入試等の責務の急激な増加により、2020年度は研究活動の停止を余儀なくされ、2021,2022年度もCOVID-19以前ほどの研究時間を確保できない状況が続いている。そのため、予定していた実験動物と各種物品の購入を延期せざる得なくなり、それらの経費を次年度に持ち越すこととなった。具体的には、老化促進モデルマウス、細胞培養およびELISA関連の試薬などの購入を予定している。なお、2023年度から研究代表者は、他の研究施設に移動して実験を行うことになるため、クリーンベンチのへパフィルター交換は不要となった。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] ポリユビキチン鎖量に基づく脊椎動物細胞のプロテオスタシス評価系の検討.2022

    • 著者名/発表者名
      小針佑介,平河多恵,加藤尚志,高田耕司
    • 学会等名
      日本動物学会 第93回 早稲田大会
  • [学会発表] 線維芽細胞の老化とポリユビキチン鎖の量との関係について.2022

    • 著者名/発表者名
      小針佑介,平河多恵,加藤尚志,高田耕司
    • 学会等名
      第95回 日本生化学会大会

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公開日: 2023-12-25  

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