研究課題/領域番号 |
19K07900
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 健吾 北海道大学, 大学病院, 臨床検査技師 (70549930)
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研究分担者 |
木庭 新治 昭和大学, 医学部, 教授 (20276546)
渡部 琢也 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (30297014) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 血管作動性物質 / 動脈硬化 / 虚血性心疾患 / バイオマーカー / 血管内皮細胞 / マクロファージ / 血管平滑筋細胞 |
研究実績の概要 |
β-Endorphin受容体、Lipocalin-2、Lipocalin-2受容体は、THP1(単球)、THP1由来マクロファージ、ヒト大動脈平滑筋細胞(HASMC)、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に発現していた。β-Endorphin受容体においては、ヒト大動脈内皮細胞にも発現を確認した。 β-EndorphinおよびLipocalin-2はHUVECにおいて、TNF-α誘導性のICAM1、VCAM1、SELE(E-selectin遺伝子)mRNAおよびタンパク質発現を有意に促進し、それにはNF-kBとp38のリン酸化促進が関与していた。HUVECの増殖は、β-Endorphinでは促進し、一方Lipocalin-2では抑制されたが、どちらもアポトーシスには影響していなかった。動脈硬化病変形成にはマクロファージの炎症性フェノタイプも関与することから、THP1細胞由来マクロファージの炎症性フェノタイプを検討した。β-EndorphinはおよびLipocalin-2は、マクロファージの分化自体に影響はないが、炎症性フェノタイプを炎症促進性のM1(MARCO発現を促進、Arginase-1発現を抑制)にシフトした。それにはNF-kBの促進が関与していた。また、PPAR-γ発現はβ-Endorphinでは変化が無かったが、Lipocalin-2では優位に減少した。β-EndorphinおよびLipocalin-2は、HASMCのPDGF-BB誘導性の遊走を促進した。また、β-EndorphinはHASMCの増殖を抑制したが、アポトーシスも誘導していた。動脈硬化自然発症モデル動物のApoe欠損マウスにβ-EndorphinもしくはLipocalin-2を投与すると、大動脈硬化病変は有意に促進された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
β-Endorphin、Lipocalin-2、Cardiotrophin-1、Kisspeptin-10、Fetuin-Aの動脈硬化の3大主要現象に対する作用のIn vitro実験は終了している。また、β-Endorphin、Lipocalin-2の In vivo投与実験は、申請書に記載した進行計画に則って効率良く研究が遂行された。よって、実施計画はおおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
1) In vitroの検討:動脈硬化病変形成に関連するマクロファージや血管内皮細胞からの炎症性サイトカイン分泌、細胞外マトリックス発現、マクロファージのフェノタイプ(Fetuin-A)、強力な動脈硬化促進性ペプチドであるSalusin-βの7分画の動脈硬化の3大主要現象に対する作用について検討する。また、それらの現象に対する分子メカニズム(シグナル伝達)を解明する。 2) In vivoの検討:動脈硬化自然発症モデル動物のApoe欠損マウスへのβ-EndorphinもしくはLipocalin-2投与により大動脈硬化病変が有意に促進されたメカニズムを詳細に検討する。また、Salusin-βの7分画の中からin vitroで作用が確認された分画およびFetuin-Aについて投与実験を開始する。 3) 臨床研究:Cardiotrophin-1、β-Endorphin、Lipocalin-2の虚血性心疾患患者における当該血管作動性物質のヒト血中濃度と冠動脈硬化病変の進展度との相関を調べ、動脈硬化(虚血性心疾患)の病態把握のためのバイオマーカーとしての有用性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
首尾よく実験が進み支出が抑えられたため。Acceptされている論文の論文掲載料および次年度の消耗品購入に充てる。
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