研究課題/領域番号 |
19K07903
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
松下 弘道 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 科長 (50286481)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 悪性リンパ腫 / フローサイトメトリー / 微小残存病変 / 慢性リンパ性白血病 |
研究実績の概要 |
造血幹細胞移植の普及や分子標的療法の開発により良好な治療反応性が得られる成熟リンパ系腫瘍症例が増加しており、微小残存病変(MRD)陰性を確認することが治療終了・中止の判断の根拠として期待されている。近年、各病院の臨床検査室が保有する細胞表面マーカーの測定機器であるフローサイトメトリーのマルチカラー化が進み、多くの細胞表面マーカーの発現を同時に解析することが可能となりつつある。本研究では、それらの機器を用いて容易でかつ有用な日常臨床用のMRD評価方法を構築することを目的とする。 今年度は、末梢血に出現する成熟リンパ系腫瘍の中で慢性リンパ性白血病(CLL)に着目をして研究を進めることとした。CLLは、細胞形態、細胞表面マーカーなどフローサイトメトリー検出の際に必要となる細胞の特徴が比較的均一であることが知られている。また最近、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬イブルチニブやBCL2阻害薬ベネトクラクスの有効性が示され、MRD検索の有用性が示されている。 CLLに発現している細胞表面マーカーはCD45のほか、CD19、CD5、CD43、CD79b、CD81があり、これらのマーカーを利用してMRD解析パネルを作製した。腫瘍細胞の検出感度は、50~100万個の細胞を取り込むことで0.01%の腫瘍細胞の検出が可能であった。一方で、CD43およびCD79bは陰性~弱陽性であることが少なからず存在した。それゆえに、症例ごとに腫瘍細胞を抽出するgatingを変更する必要があること、細胞表面マーカーの発現パターンが非典型的な場合にはMRDが検出されても非腫瘍性B細胞であることを否定できないことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、過去のCLL症例における細胞表面マーカーの発現強度の検討を行ったところ、従来から知られているCD19やCD5、CD23のほか、CD43やCD79bの発現低下があることが確認され、この方法では多くの症例に適応できない可能性が出てきた。それゆえに西欧でERIC (European Research Initiative on CLL) が標準化のために進めているCLLのフローサイトメトリーの抗体パネルについて比較検討することとした。
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今後の研究の推進方策 |
ERICの抗体パネルではCD200およびROR1の発現を解析しているため、これらを新たに加えて検討を行う方針とした。このパネルを利用してCLLでの有用性を検索するとともに、非CLL例を用いて非腫瘍性Bリンパ球によるgating領域内への漏れ込みの頻度を確認することとする。また、このほかの検体処理の過程についても、条件を変えて行うことでよりよい結果が得られるか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今後の研究の推進方策に従い、CLL例および非CLL例に対しマルチカラーによるフローサイトメトリー検査を行うために、試薬・器具類を購入する。また関連領域における現在の動向を探るために、国内および国外の関連学会へ出席や学術書の購入を予定している。
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