研究課題
造血幹細胞移植の普及や分子標的療法の開発により良好な治療反応性が得られる成熟リンパ系腫瘍症例が増加しており、微小残存病変(MRD)陰性を確認することが治療終了・中止の判断の根拠として期待されている。本研究では、マルチカラーフローサイトメトリーを用いて細胞表面マーカーを利用した容易でかつ有用な日常臨床用のMRD評価方法を構築することを目的としている。今年度は、昨年度に引き続き慢性リンパ性白血病(CLL)のMRD検出系の確立に着目をして研究を進めてきた。当初CLL-MRD解析パネルはCD45/ CD19/ CD20/ CD5/ CD43/ CD79b/ CD81の7種類の細胞表面マーカーを利用し典型例における検出感度は0.01%であったが、非典型例では腫瘍細胞が少数になると細胞集団が不明瞭となり非腫瘍性B細胞との区別が難しいことが少なくなかった。そこで汎用性の高いCLL-MRD解析パネルの作製を目的として、一部の細胞表面マーカーを入れ替えながら8種類まで増加させた2つのパネル、CD19/ CD20/ CD22/ CD3/ CD5/ CD43/ CD79b/ CD81およびCD19/ CD20/ CD5/ CD43/ CD79b/ CD81/ CD200/ ROR1を構築した。同時にdoublet除去などの処理を併用して、CLL-MRDの検出能の改善を試みた。しかし、これまでのパネルと同様に典型例では十分な検出感度が得られるものの、非典型例では依然として非腫瘍性B細胞との区別が困難であり、CLL-MRDの検出能は十分ではなかった。そこで新機器の導入を機に、使用する細胞表面マーカーを12種類まで増加させたCLL-MRD解析パネルを作製するとともに検出システムの変更を行なったところ、安定的に腫瘍細胞集団の検出が可能となった。
3: やや遅れている
今年度は、典型例だけでなく非典型例についても確実にCLL-MRDを検出できるシステムの構築を図るために細胞表面マーカーを入れ替えた2種類のCLL-MRD解析パネルの検証を行なったが、非典型例における検出能の改善は認められなかった。しかし、その後に作製した12種類の細胞表面マーカーを使用したパネルでは検出能の改善が認められ、今後進捗状況の改善が見込まれる。
新たに作製したCLL-MRD解析パネルが非腫瘍性B細胞を検出しないことを再確認するとともに、CLL症例の臨床経過を反映していることを検証していきたい。
今後の研究方針に従い、引き続きCLL-MRD解析パネルを用いたフローサイトメトリー検査を行うために、試薬・器具類を購入する。また関連領域における現在の動向を探るために、国内および国外の関連学会へ出席や学術書の購入を予定している。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
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