研究課題/領域番号 |
19K07904
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
石岡 憲昭 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 名誉教授 (70184471)
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研究分担者 |
寺田 昌弘 京都大学, 宇宙総合学研究ユニット, 特定准教授 (10553422)
山崎 丘 帝京大学, 公私立大学の部局等, 講師 (70301174)
石原 昭彦 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (90184548)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 冬眠 / 筋萎縮 / 細胞老化 / 老化 / 宇宙環境 / 惑星居住 / 惑星間飛行 |
研究実績の概要 |
我々はこれまで、冬眠動物として有名な二ホンヤマネと同じヤマネ科であるアフリカヤマネによる実験で、筋の酸化活性が増大することで代謝能力を上げて低温時の代謝を維持していることを明らかにしている。冬眠するコウモリでは冬眠後で骨格筋に萎縮が認められず、筋萎縮の抑制にはHSP70(Heat shock protein 70)が関係していると報告されているが、アフリカヤマネにおいてもコウモリ同様に筋萎縮にHSPが関係し、低温飼育において発現量が増加することを明らかにしている。またラットに対して薬物による疑似冬眠の誘発や骨格筋の変化の解析を検討し、Adenosine 5’-monophosphate sodium salt(5’-AMP)を投与して20℃で飼育したところ、投与後体温を飼育環境温度近くまで低下させた状態で約4時間低体温を持続することを見出している。さらに尾部懸垂ラットと5’-AMP投与後の尾部懸垂ラットのヒラメ筋をそれぞれ比較し、疑似冬眠でも筋萎縮を抑制する傾向があることも見出している。今回我々は、休眠作用を有するが、本来冬眠しないマウスを用いて、人工的に冬眠様睡眠を長期間誘導させることを目指した。ラットでの実験を踏まえ、5’-AMPによる低体温状態を維持するために小型浸透圧ポンプの利用を検討した結果、持続的に至適濃度の試薬投与が可能であることを確認できた。またサーモカメラによる体温測定も問題ないことを確認した。後半計画していた実験の遅れを次年度取り戻すべく研究体制や実験環境を整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
代表研究者の実験実施場所の移動と帝京大の研究分担者担当の動物飼育実験について麻酔薬の向精神薬登録手続きや新たな実験計画書の申請と承認および動物実験研修の遅れのため動物実験開始が著しく遅れたため。また京大の研究分担者の一人が急逝したため、研究分担および実施体制の見直しとその対策に時間を要し、さらに新型コロナ禍により実質的研究ができない状態になったたため。
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今後の研究の推進方策 |
後半に予定していた実験が研究分担者の急逝やコロナ禍という予想もしていなかった不可避的理由により大幅に遅れているため、全ての動物実験を帝京大研究分担者に集約させ、代表研究者とともに実施し解析すること。また京大分担研究者による解析も集約し、新たな分担者を加えることなく遂行できることが確認できたため、今年度は薬物による疑似(人工)冬眠の誘発と筋萎縮関連の分子動態解析に集中する予定である。 薬剤は、Adenosine 5’-monophosphate sodium salt(5’-AMP) を使用して、小型浸透圧ポンプに封入後皮下に埋め込み、適量を継続的に最低1週間投与する。体温をサーモカメラで毎日少なくとも1回計測する。低体温飼育終了後にヒラメ筋、腓腹筋、足底筋等を含む下肢部の骨格筋を摘出し重量測定を行い、筋萎縮を評価する。また、これまでの研究から筋の酸化系酵素であるSDH(Succinate dehydrogenase) の活性や筋の萎縮に大きく関わっていると考えられるHSP(Heat shock protein)、PGC-1α (Peroxisome proliferator-activated receptor γ coactivator-1α )、FOXO1(Forkhead box protein O1)等の分子を中心に動態を解析する。 年度後半には、低温飼育や薬物投与による疑似(人工)冬眠させたマウスの血液や肝臓、脳など各臓器を用いての遺伝子発現やタンパク質動態の網羅的比較解析により、冬眠や筋萎縮、老化に関わる分子の特定を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していた出張が、新型コロナ禍の影響でキャンセルされたため、次年度使用額が生じた。次年度は研究の遅延を取り戻すために全体計画の見直しや動物実験の解析のための会合を複数回計画している。そのための出張旅費の一部に充てる計画である。
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