我が国はすでに超高齢社会に直面しており、高齢者の健康寿命を維持する上で筋骨格系などの運動器の維持が喫緊の課題となっている。サルコペニアは筋量と筋 力の進行性かつ全身性の減少に特徴づけられ、身体機能障害、生活の質(QOL)の低下や死のリスクを伴う。正常な筋量・筋力を維持することは高齢者の身体機能 を維持し健康寿命を延伸するために極めて重要である。肥満・内臓脂肪の蓄積はインスリン抵抗性を惹起し、脂質異常、耐糖能異常、高血圧をもたらし、動脈硬 化の促進と心血管疾患発症のリスクを高め、患者の生命予後やQOLの低下をもたらす。 甲状腺ホルモンはT4からT3に活性化され生理作用を発揮し、骨格筋や骨の 分化を促進するとともに抗肥満効果を示し、高齢者で問題となるサルコペニア肥満の病態を改善する効果が期待される。本研究では、骨格筋において甲状腺ホル モン活性化を介してサルコペニアを改善しうる新規G蛋白共役受容体を同定するとともにその機能解析を行い、将来的にサルコペニア肥満を予防ならびに治療す るための分子基盤を確立することを目的としている。研究計画に基づき、まずマウス初代培養細胞を用いて、骨格筋芽細胞(myoblast)ならびに成熟骨格筋細胞 (myotube)において甲状腺ホルモンを活性化する酵素である2型甲状腺ホルモン脱ヨード酵素(D2)の発現を増強させる新規G蛋白共役型受容体の同定を行った。同 定した受容体の発現を培養がより容易で再現性が得られやすいマウス骨格筋細胞株(C2C12細胞)を用いて検討し、候補となる受容体の機能解析を行った。得られた研究結果の一部を学会にて発表した。
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