研究課題/領域番号 |
19K07908
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
山本 武 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (70316181)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 葛根湯 / 経口免疫療法 / 食物アレルギー / 腸管粘膜免疫系 / 制御性T細胞 |
研究実績の概要 |
これまでに申請者らは、食物アレルギー病態モデルを用いて、経口免疫療法に葛根湯を併用する治療により、食物アレルギーの治療効率(脱感作誘導率)が上がることを明らかにしている。そこで、この葛根湯と経口免疫療法により誘導された治療効果の長期維持(寛解維持)について病態モデルを作製し検討を行った。経口免疫療法を行なった群では、経口免疫療法による治療終了後の食物抗原(OVA)除去後のOVA経口負荷試験において、OVA除去期間の延長に伴い発症率が次第に上昇し、3週間後にはほぼ全てのマウスで再び症状を発症した。一方、併用療法を行なった群では、治療後の症状発症率はOVA除去期間の延長に伴いわずかに増加したものの、3週間でも治療効果は維持された。したがって、併用療法によって寛解維持が誘導されることが示唆された。さらに、寛解維持率を上昇させるため、OVA除去期間に葛根湯やOVAの投与による効果を検討した。そこ結果、経口免疫療法で用いるよりも極少量のOVAと葛根湯を投与し続けることにより、併用療法により誘導された脱感作が3週間後にも維持(寛解維持)されることを明らかにした。 また、葛根湯による効果の詳細な機序を明らかにするために、葛根湯成分による食物アレルギー病態モデルに対する効果を検討した。葛根湯の構成生薬の葛根の主成分であるプエラリンが、食物アレルギーの発症の予防に有効であることを明らかにし、さらに、プエラリンは腸管にFoxp3陽性制御性T細胞を誘導することによって、腸管粘膜免疫系の過剰亢進を抑制しアレルギー症状の発症を抑制すること症状ことを明らかにした。また、制御性T細胞の誘導には、プエラリンによる腸管上皮細胞のレチノイン酸合成酵素であるALDH1a1の誘導によるレチノイン酸の制御が関与することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に進展している。 未だ有効で安全な治療法が確立していない食物アレルギーの治療として、葛根湯と経口免疫療法の併用療法について検討を行い、その機序の詳細やさらに有効性・安全性の向上の検討を行い、成果を挙げている。さらに、寛解維持の誘導についても、併用療法の有効性を見出している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、有効性を報告した葛根湯と経口免疫療法の併用療法をもとに、葛根湯や葛根湯成分を用いて経口免疫療法との併用方法等を検討し、さらに効率良く脱感作を誘導することや併用療法後に葛根湯や葛根湯成分を用いて効率良く寛解維持を誘導することを検討する。これらの検討により有効性が見出された治療方法において、詳細な機序の検討を行う。特に、制御性T細胞の誘導に関与するレチノイン酸について、葛根湯の成分が発現制御することを明らかにしたことから、腸管に発現するレチノイン酸合成酵素(ALDH1a1やALDH1a2等)やレチノイン酸代謝酵素(Cyp26b1等)の制御について、腸管砂防を用いたin vitro系での検討を行う。また、食物アレルギー患者にから苦痛を与えずに容易に採取することが可能な標本が血液サンプルであるため、血液サンプルから治療効果を評価することが可能になれば、治療や治療の評価による余分な食物抗原の投与の予防に繋がり安全性の向上にも繋がる。そこで、今後は当初の予定通り、治療効果が示された各病態モデルから血液サンプルを採取し、血液サンプルでの治療効果の解析を可能とするための血液バイオマーカーの探索を行う。
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