糖尿病の原因は血糖値を調節するホルモンである、インスリンが出にくくなる「インスリン分泌不全」と、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」に大別される。インスリン抵抗性を起こす原因としては肥満が第一に挙げられるが、日本人をはじめとする、アジア人は標準体重を少しオーバーする程度のごく軽度の肥満でもインスリン抵抗性を生じやすいことが報告されている。しかし、このアジア人が軽度の肥満でもインスリン抵抗性を生じる分子メカニズムについては不明な点が多い。インスリン抵抗性は血中脂質の上昇などによって起こされ、全身の臓器で「慢性炎症」を起こすことにより増悪すると考えられているが、その上流にあるメカニズムは不明である。本研究では、細胞間・臓器間の情報伝達物質として近年発見された、「エキソソーム」と炎症に注目して研究を開始した。 肥満外科手術の前後での血中因子の解析を行い、エキソソームの炎症性の低下が認められた。培養肝臓細胞を用いて、過剰な脂質など生活習慣病に関連する刺激を行ったところ、エキソソームの炎症性が亢進した。これらの結果から、エキソソームは生活習慣病において慢性炎症に重要な役割をはたしていると考えられた。また、研究期間中、血糖値が高い日本人2型糖尿病患者では食後の肝臓でのインスリン分解が亢進している事をアメリカ糖尿病学会誌BMJ Diabetes research and care誌に報告した。
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